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牧野知弘「ニッポンの不動産の難点」

安易なアパート建設・経営、人生を不幸にする危険…安定した賃貸困難、多額借金抱える

文=牧野知弘/オラガ総研代表取締役
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安易なアパート建設・経営、人生を不幸にする危険…安定した賃貸困難、多額借金抱えるの画像1「Thinkstock」より

 2015年10月実施の国勢調査によれば、日本の人口は1億2711万人。この数は5年前の10年の調査時点と比べて94万7000人の減少。1920年の調査開始以来初の減少を記録した。本格的な人口減少社会への突入を、今回の調査はつきつけている。

 そんななか、国土交通省の調査によれば、国内の住宅着工戸数は15年で90万9000戸。前年比1.9%の増加となった。国内の空き家総数は13年で約820万戸。毎年増加し続ける空き家がある一方で、日本は毎年100万戸近い新築住宅をせっせとつくり続けている奇妙な国である。

 住宅着工統計のなかでもとりわけ好調なセクターが「貸家」である。15年は総数で37万8000戸。対前年比で4.6%の伸びとなった。貸家の着工が多いのは首都圏(1都3県)で、全体着工戸数31万8000戸のうちの42%に当たる13万5000戸もの貸家が着工されている。対前年比では7.8%の増加だ。

貸家が増加している要因

 貸家が増加している要因はなんだろうか。

 ひとつが、相続税評価における基礎控除額の改定である。昨年1月1日より、相続税評価額の算定において、従前は「5000万円+1000万円×法定相続人の数」であったものが、「3000万円+600万円×法定相続人の数」に4割も縮小されてしまったのだ。

 この改定は全国的にはあまり関心を呼んでいないが、都市部においては今まで相続税とは縁のなかった世帯でも、課税が及ぶ世帯が続出することとなっている。都内では対象となる相続税課税世帯が2倍になるとの推計もある。

 こうした課税強化策への対応として脚光を浴びたのが賃貸アパートの建設による相続税評価額の圧縮だ。土地は更地にしておくと、相続の際は「路線価」で評価される。ところが、土地の上に賃貸アパートを建設すれば、評価額が大幅に圧縮できるのだ。

 例えば相続税評価額が1億円の土地の上に、7000万円をかけてアパートを建築することを考えてみよう。

 まずアパートを建設することで、従来は1億円だった評価を引き下げることができる。土地の上に賃貸資産を建設すると「貸家建付地」としての評価になる。これは従来の路線価に基づいた評価額から借地権割合と借家権割合を乗じたものを控除できるというものだ。具体的には、この土地の借地割合を60%、借家権割合を30%とすれば

 1億円×(1-60%×30%)=8200万円

 となる。さらに建物については、借家権割合分の減額が認められるので建物の固定資産税評価額を3000万円とすれば、

 3000万円×(1-30%)=2100万円

 になる。

牧野知弘/オラガ総研代表取締役

牧野知弘/オラガ総研代表取締役

オラガ総研代表取締役。金融・経営コンサルティング、不動産運用から証券化まで、幅広いキャリアを持つ。 また、三井ガーデンホテルにおいてホテルの企画・運営にも関わり、経営改善、リノベーション事業、コスト削減等を実践。ホテル事業を不動産運用の一環と位置付け、「不動産の中で最も運用の難しい事業のひとつ」であるホテル事業を、その根本から見直し、複眼的視点でクライアントの悩みに応える。
オラガ総研株式会社

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