自営業はサラリーマンより得?経費としてお金を使い実質的出費を減らせる?
人生は決断の連続。その際に大切なポイントは何か。そのヒントをお伝えすべく、『損しないのはどっち?』(幻冬舎)の著者である公認会計士の平林亮子が、お金の観点から、さまざまな「どっち?」を投げかけてまいります。
衝撃的だった「ビフォータックス」の発想
誰にでも忘れられない出来事がひとつや2つあると思います。
私にもあります。そのなかのひとつが大学時代のこんな出来事。今にして思えば、これは人生を変えるほどの衝撃を私に与えたのでした。
大学3年生で公認会計士試験に合格した私は、自分が通っていた会計士受験専門学校で講師の補助などをするアルバイトをしていました。ある日のこと。その専門学校で講師をしていた公認会計士の先生が、ランチをごちそうしてくれました。私と一緒にアルバイトをしていた友人も一緒に、大学生にしては豪華すぎるランチをごちそうになりました。無邪気な女子大生だった私は、「公認会計士って、やっぱりすごいね。こんなに高いランチを平気でごちそうできるほど稼げるんだね」と少し興奮気味に友人に言いました。
ところが、その同い年の男子は平然とこう言いました。
「それはもちろんそうだけど、先生の年収から想定すると、実質半額なんじゃないのかな」
首をかしげる私に、彼は説明を続けます。
「先生は自分で事務所も持っていて、専門学校で講師もしていて、僕たちは専門学校のスタッフ。そうなると、ランチ代は先生の事業のための経費にできるでしょ。経費だとすれば、その分、所得が減る。仮に先生の所得税率が50%に達していれば、実質半額になるでしょ。」
個人で事業をしている場合、税金は所得に対して課せられることになり、所得は売上から経費を差引いて計算されます。また、日本における個人の所得税は超過累進課税となっており、税率は5%から45%まで所得に応じて高くなっていきます。住民税まで合わせると、個人の所得に対して55%超の税金が課せられる可能性があります。仮に売上100,000円で税率55%とすると、経費がゼロであれば税金は55,000円。
・所得(100,000円-0円)×55%=55,000円
もし、経費を30,000円使えば、
・所得(100,000円-30,000円)×55%=38,500円
となります。
経費を30,000円使うと税金が16,500円減りますから、実質的な出費は
・30,000円-16,500円=13,500円
となるわけです。