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新見正則「医療の極論、常識、非常識」

【熊本地震】避難所に潜む「死の危険」…生死を分けるのはストッキング&ある行為!

文=新見正則/医学博士、医師
【熊本地震】避難所に潜む「死の危険」…生死を分けるのはストッキング&ある行為!の画像1OGIMA 着圧ソックス オープントゥ 医療用弾性ソックス(「Amazon HP」より)

 今回は「エコノミークラス症候群」についてのバトルです。今月発生した熊本地震の避難者がエコノミークラス症候群を発症していると報じられています。

“非常識君”は、避難所に入らずに車の中で過ごす人がエコノミークラス症候群になりやすいのだから、基本的に車中での避難生活は禁止するべきだという論調です。確かに、狭い車の中では横になることもできずに、長時間にわたり足を下げた同じ姿勢が続きます。そうすると、静脈血は下肢に留まり、そんな血液が流れない状態が続くと血の塊ができるのです。そして、水を飲まずに脱水状態が続くと、血液が濃くなり、これもまた血栓の形成を助長します。非常識君が言うように、車中での避難生活を禁止すれば、相当数のエコノミークラス症候群は防げる可能性があります。

 一報、“常識君”が言います。

「確かに車中泊が禁止できる環境が整えば素晴らしいことだが、諸般の事情で避難所に入れない人もいるはずだ。ペットの同伴を許してくれる避難所はそんなに多くはないと聞いている。また、他の事情で車中泊が避難所よりも快適だと感じている人もいるだろう。そして、避難所で生活していてもエコノミークラス症候群は発症している」

 確かに、車中泊はエコノミークラス症候群にとっては相当なリスクファクターになります。また、避難所の衛生環境が悪くてトイレが汚いと、水分をなるべくとらずにトイレの回数を減らす工夫をしたりします。それもエコノミークラス症候群のリスクファクターです。

医療用ストッキング

 そこで“極論君”がいいます。

「全員に医療用のストッキングを支給すれば相当な効果が期待できるはずだ」

 確かにそうです。医療用ストッキングを着用すると、足を下げていても寝ている状態とほぼ同じになります。ですから、足を下げざるを得ない、運動量が少ない、脱水状態が続いている人でも、医療用ストッキングを穿けばエコノミークラス症候群の発症を相当数予防できるのです。問題は金銭的なことと、何足のストッキングが被災地に用意できるかという点です。

 なぜ、医療用の弾性ストッキングで静脈の血液が固まりにくくなるかというと、静脈の流れの速さです。医療用ストッキングを穿かずに足を心臓より下に下げると、静脈は太くなるのです。そして静脈の壁は動脈に比べて薄いので、結構太さが変動します。静脈の直径が2倍になれば、速度は直径の2乗に反比例しますので4分の1と激しく減速します。

新見正則/医学博士・医師

新見正則/医学博士・医師

1959年生まれ
1985年 慶應義塾大学医学部卒業
1985年~ 慶應義塾大学医学部外科
1993~1998年 英国オックスフォード大学医学部博士課程
1998年~ 帝京大学医学部外科に勤務

 幅広い知識を持つ臨床医で、移植免疫学のサイエンティスト、そしてセカンドオピニオンのパイオニアで、モダン・カンポウやメディカルヨガの啓蒙者、趣味はトライアスロン。著書多数。なお、診察希望者は帝京大学医学部付属病院または公益財団法人愛世会愛誠病院で受診してください。大学病院は紹介状が必要です。

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