テレビを長時間見る人は短寿命だった!運動しない人は危険、8年後の死亡率が3倍に
「テレビばっかり見ている人は短命」という事実をご存知ですか? とくに1日4時間以上テレビを見ている人は、動脈硬化症などの病気になりやすく寿命も短いことが、多くの追跡調査で明らかにされています。
テレビを見ていて、ハラハラドキドキする瞬間もあるかもしれませんが、大部分の時間はただぼんやりと情報を受け流しているだけではないでしょうか。その間、脳細胞はほとんど休んでしまっていて、自律神経も働く必要がなくなり、ときに血圧が下がったりもします。血圧が普段から低めの人は、テレビを見たあと急に立ち上がると、立ちくらみを起こしたりすることもありますので要注意です。
それだけではありません。テレビを見ている間は体をまったく動かさず、高カロリーなお菓子などを食べたりするでしょうから、肥満や血栓症などの素地をつくることにもなります。血栓症とは、血管の中で血液の塊りができた状態のことで、脳卒中や心筋梗塞、エコノミークラス症候群などの引き金となるものです。
体を動かさないことの弊害は、災害後の調査にも見ることができます。避難所生活が長くなり体を動かさなくなった人々のなかに、筋肉が急速に衰えて歩けなくなってしまった人もいるのです。
これらの事実から、体を動かさず、頭も使わない状態がいかに恐ろしいものであるかがわかります。
英国で、日頃の運動量と将来の死亡率との関係を調べる研究が行われました。運動量は、以下の4つから選んでもらうという方法で調べたものです。
(1)仕事はデスクワークで、とくに健康のための運動はしていない
(2)仕事はデスクワークで運動は1日30分以内、または立ち仕事で運動はとくにしていない
(3)立ち仕事に従事し運動は1日30~60分、または清掃、配管、看護、介護などの肉体労働に従事し、運動はとくにしていない
(4)重労働に従事している、または立ち仕事に従事し、運動も1日60分以上している
あなたの場合はどれですか? (1)か(2)の人が多いのではないでしょうか。分析の結果、(1)の人は(4)の人に比べて8年後の死亡率が3倍も高いことがわかりました。
ただし、この調査では、運動したから長生きだったのか、あるいは生まれつき体が丈夫だったから運動がたくさんできたのかが区別できていません。
運動で「がん抑制遺伝子」が活性化
幸い、この調査とは別に最新の統計学を駆使してこの問題をうまく回避した研究がたくさん行われていて、運動の効能は、多くの科学的根拠(エビデンス)が示すところとなっています。
たとえば「ほとんど運動をしていない人」は、「日々の運動を心がけている人」に比べて大腸がん、乳がん、子宮がんがそれぞれ45%、肺がんが25%も多いということです。多くの調査から、すべてのがん死亡の8.6%が運動不足によるものであることもわかりました。身近なところでは、運動を続けると血圧、LDLコレステロール、中性脂肪、血糖値などの検査データが劇的に改善します。
85歳以上の人を対象に、認知症の予防法を探るための調査が米国で行われましたが、それによると、週に4時間以上の運動を続けている人は、認知症になる割合が格段に小さく、運動をしてこなかった人に比べてわずか5分の1だったそうです。運動には定年がないようです。
運動の効能については、遺伝子レベルや細胞レベルでも研究が進んでいます。たとえば適度な運動は、増え過ぎたインスリンや性ホルモンの分泌・活性をほどほどに抑えることがわかってきました。過剰なインスリンや性ホルモンは、細胞分裂を加速して発がんの原因となりますから、この発見は重要といえます。また運動によって、p53と呼ばれる「がん抑制遺伝子」が活性化される事実も判明しました。
積極的に体を動かすことで病気の回復も早まります。人間の体と頭脳は、たえず動かし続けることで初めて健康が保たれるようにできているのです。
(文=岡田正彦/新潟大学名誉教授)