ソフトバンクが史上最高3.3兆円で買収した無名企業は、「トンデモナイ」企業だった
ソフトバンクグループが7月18日、3.3兆円という巨額の買収案件を発表した。買収するのは英国のARM(アーム)ホールディングスという会社だ。このニュースは直後に話題となったポケモンGOのニュースで霞んでしまった感はあるが、そもそもアームという会社の知名度の低さも関心を呼ばなかった理由かもしれない。
パソコンに搭載されているCPUで市場シェア80%と圧倒的なリーダーであるインテルの名前を知らない人はいないだろう。売上高ではインテルにははるかに及ばないが、スマートフォン(スマホ)向けCPUでインテルに相当するのがアームである。市場シェアは95%ともいわれている。
それなのにインテルと違いほとんど無名なのは、そのユニークなビジネスモデルにある。メディアは半導体設計会社と紹介しているが、アームは単なる設計会社ではない。実に興味深い会社なのである。
サンリオのハローキティとの共通点
CPUを得意とする会社としてルネサスエレクトロニクス(以下、ルネサス)がある。自動車に搭載されるCPUでは市場シェア40%のリーダー企業だ。東日本大震災でルネサスの工場が被災した時に、自動車生産に大きな影響が出たことも話題となった。
インテルの顧客はPCメーカーであり、ルネサスの顧客が自動車メーカーであるように、普通は半導体メーカーの顧客は半導体を部品として使うセットメーカーだ。ところが、アームの顧客は半導体メーカーなのである。どういうことか。
これはサンリオが行っているハローキティのライセンスビジネスに似ている。サンリオはキティちゃんのぬいぐるみなど物販事業のほかに、アパレルメーカーなどにハローキティのデジタルデータを提供するライセンスビジネスにも力を入れている。ライセンスビジネスのよい点は、在庫のリスクを持たず、かつ販路を拡大できることだ。海外では特にライセンスビジネスの割合が高く、サンリオの利益率を高める原動力ともなっている。
アームもかつてはいわゆる半導体メーカーとして、CPUをセットメーカーへ供給していた。しかし、今や完全にビジネスモデルを転換し、セットメーカーではなく半導体メーカーにCPUの設計データを提供している。そして半導体メーカーはそこに周辺回路を加えて最終的な半導体として出荷している。