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牧野知弘「ニッポンの不動産の難点」

不動産市場、「危険な事態」が密かに進行…大手不動産、負債が異常膨張で霞む「出口」

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住友不動産本社が所在する新宿NSビル(「Wikipedia」より/Rs1421)

 大手不動産会社の有利子負債総額が増えている。三菱地所、三井不動産、住友不動産の大手3社の2016年3月期の有利子負債残高は3社合計で約7.6兆円にものぼる。3社の売上高合計は約3.4兆円であるから、なんと売上高の2倍以上の有利子負債を抱えていることになる。

 とりわけ、有利子負債が多いのが住友不動産である。8549億円の売上高に対する有利子負債は3兆1589億円、売上の3.7倍もの有利子負債を計上している。有利子負債額が多いとされるソフトバンクグループが、売上高9.2兆円に対して有利子負債額11.9兆円、倍率にして1.3倍であることを考えると、その数値は突出している。

 不動産業は、土地という原材料を仕入れて、建物等を建設して、テナントに賃貸する、あるいは加工後の不動産を売却すること(たとえば分譲マンション、あるいは収益用不動産として)で、収益を計上していくのがビジネスモデルだ。

 ここ数年、不動産業界は、アベノミクスによる「低金利政策」の恩恵を一番に享受してきた。融資審査の緩んだ金融機関から、大量の資金を借りて不動産に投資をする。大企業は円安の恩恵を受けて業績を伸ばす。業績の伸長は、事業の拡大や新たな雇用を生み出し、オフィス床に対する需要が活発になる。国による徹底した新築住宅優遇策(たとえば、住宅ローン金利、所得税減税など)と株高誘導、都心部における容積率緩和などによって、分譲マンションは、折からの円安によって押し寄せた外国人投資マネーの恩恵まで取り込んで好調を維持することができた。

世界的に異質な日本のREIT


 もうひとつ、不動産業界を「勇気づけた」のが、日本銀行によるREIT(不動産投資信託)の買い支えである。日銀は10年以降、国債以外にもREITやETF(上場投資信託)などへの投資を始め、REITについては現在、年間で900億円を投資し、5月末時点で購入残高は3159億円にものぼっている。

 日本のREITは世界的にも「珍しい」手法で運用されている。つまり、REITにはスポンサー会社があって、このスポンサーがREITの運用に大きく関与するという「外部運用型」の形態をとっている。

 たとえば、米国などではREITはすべて内部運用型である。内部運用型とは、REIT自身が自らの意思決定で独自に資産を取得・運用し、また開発もできる方式を採用しているのだ。いっぽう日本のREITは、REIT自体には意思決定能力はなく、資産運用会社が不動産に対する投資から運用、売却までのすべての意思決定を行っている。そして、資産運用会社はスポンサーが出資し、社長をはじめとした役員陣もスポンサーから派遣されているのが実態だ。