学生を対象に金銭が給付・貸与される、奨学金制度。しかし、4月6日付日本経済新聞によると、独立行政法人日本学生支援機構(JASSO)の奨学金制度を利用した学生の一部が、卒業後に返済を滞納している現状が問題視されているとのこと。また、「3カ月以上の滞納者は17万人に上り、898億円の返済が滞っている」とも報じている。
こうした問題が起こる背景には、奨学金について正しく理解しないまま利用している学生が多いという実情があることも事実だ。まずはこの制度には2種類あることを確認しておきたい。
1つ目は「給付型奨学金」といって返済の必要がないもの。経済的な必要性を問わず、学生の能力に対して給付されるケースが多い。2つ目はJASSOなどが行う「貸与型奨学金」で、こちらは経済的理由で就学困難な学生に貸与されることが多く、返済が義務付けられている。
では、実際に滞納した場合どうなるのか。JASSOは指定信用情報機関の全国銀行個人信用情報センター(KSC)に加盟していて、3カ月以上滞納するとKSCに情報が登録される。これは一般的に「ブラックリスト」と呼ばれるもので、延滞情報は完済後5年間記録され、通常KSCのデータを確認する住宅ローンや銀行系カードローンでは審査に落ちることもあるという。
学生時代に貸与型奨学金制度を利用し、現在返済中の30代女性Aさんに話を聞いてみた。
「月々1万7000円くらいずつ返済していますが、卒業後は就職難で正社員になれず、今はアルバイトでギリギリの生活。なんとか滞納せずにやっているものの、この先もまだまだ“借金”の返済が続くと思うと、途方に暮れますよ」
しかし、Aさんは具体的な返還未済額を把握していなかった。また、正社員で働いていても、家庭の事情で毎月の返済は厳しいという20代女性Bさんは、次のように語る。
「滞納2カ月目までは催促の電話が掛かってくるだけなので、いつもそれくらいは滞納しています。もちろんブラックリストに載らないように気をつけて、3カ月に達しないうちに支払いますが、これほど生活に支障が出るなんて、学生の頃にはそこまで考えていませんでした」
Bさんにとっては、学生の時点で背負った奨学金という借金が、社会に出てから重く伸し掛かっているようだ。