家庭向け電力小売りの完全自由化は今年4月にスタートした。消費者が電力会社を替えるペースは自由化当初の4分の1に落ちたが、それでも優勝劣敗がはっきりと見えてきた。
経済産業省の認可法人、電力広域的運営推進機関によると、大手電力から新電力へと切り替えた件数は3月までの事前申し込み段階で51万件に達した。自由化実施後は伸び悩み、4月の申請は31万件、5月22万件、6月23万件、7月21万件とペースダウンした。7月末時点の累計は147万件で、総契約数(6260万件)の2.3%にとどまる。
地域別では、東京電力ホールディングス傘下の送電事業者である東京電力パワーグリッド管内が最も多く87万件。関西電力管内の29万件がこれに続き、両管内だけで8割を占めた。
新電力のなかでは、東京ガスの圧勝である。同社は初年度の契約目標を40万件としていたが、7月末までにこの数字を達成し、目標を53万件に引き上げた。7月までに獲得した40万件は、東京電力管内で新電力に切り替えた87万件のうち46%を占めたことになる。
東京ガスは、参入初年度は広告や営業活動の費用がかさみ赤字になると見ていたが、契約件数が想定を上回ったことで初年度から事業の黒字化をもくろむ。2021年3月期には首都圏需要の10%のシェア、営業利益100億円が目標だ。
東京ガス=エネット連合が新電力の勝ち組
各社とも、電力とほかのサービスのセット割引で浸透を図っている。KDDI(au)、ソフトバンクは携帯電話料金とセット、ENEOS(JXエネルギー)、昭和シェル石油などの石油会社はガソリン代とセット、私鉄の東京急行電鉄は定期代とのセット、東京ガスはガス代とセットの割引がセールスポイントだ。
東京ガスに圧倒され、通信・石油・私鉄の新電力は勢いが鈍った。JXエネルギーは、首都圏で初年度50万件の顧客獲得を目指して参入した。11万件の契約を得たが、3月までの事前申し込みがほとんどで4月以降はあまり増えていない。
当初から、東京ガスが勝者になると予想されていた。電力自由化は00年の大型工場や百貨店から始まり、04年に中型工場やスーパー、05年に小型工場が加わるといったように、段階的に進んできた。東京ガスは大口需要家向けに営業しており、実績があるうえに、同社が出資するENNET(エネット)が新電力の最大勢力となっていることが強みとなった。