東京都の小池百合子知事は9月10日、記者会見で築地市場から移転する予定の豊洲市場について、主な建物下で土壌汚染対策として実施されことになっていた盛り土が行われていなかったと発表した。
豊洲市場はかつてガス工場があり、都市ガスの製造・供給が行われていた。石炭から都市ガスを製造する過程において生成された副産物として、ベンゼン、シアン化合物、ヒ素、鉛、水銀、六価クロム、カドミウムが地面に染み込み、土壌及び地下水が汚染された。移転が決まる前の調査では、土壌から基準値の約4万3000倍という高濃度のベンゼンが検出されている。都は、その対策として地表から深さ2メートルの土を除き、その上に4.5メートルの盛り土を行えば安全性は確保できるとの専門家会議の提言を受け、それに沿った施工を行って建物を建てたと説明してきた。
だが、都は独断で工法を変更したうえ、その事実を公表していなかった。小池知事は安全性を再調査すると述べ、場合によっては移転の再延期や中止も否定しなかった。
ベンゼンは、人体に多くの悪影響を与えることが知られている。特に、発がん性が高い。骨髄機能を低下させ、骨髄性白血病を発症させることも明らかとなっている。揮発性物質であり、空気中に放出されて長く漂う。そのため、汚染された土壌を除去し、さらに4.5メートルの盛り土でフタをするとしていたのだ。35~45センチメートルのコンクリート層をつくっているため安全性は確保されていると工事業者や都の担当者は述べているが、事実を隠していたことが不審を買う原因となっている。
さらに、青果棟の床下に至っては、コンクリートの床すらないことが新たに判明した。産卸売場棟の床下には、地下から染み出たとみられる水がたまっていた。この水について、日本共産党都議会議員団は、現場を視察して都の随行職員に質問したところ、「地下水管理システムはまだ稼働していないので、地下水だろう」と説明をうけたが、本庁は「地下水システムはすでに稼働している」と説明していると矛盾を指摘している。
地下水管理システムが稼動しているにもかかわらず、地下水が床にたまっている状況は、安全性に疑問を投げかける要因を増やすことになるだろう。