専門家会議で決めた工法を勝手に変更?
土壌汚染対策には、858億円という巨費を投じている。なぜ盛り土をしなかったのか、工事費用は当初の見積もりと変わっていないのか、地下水の制御はどのように行うのか、工法が変わったことで汚染物質の空中への揮発危険性は変わらないのかなど、今後は厳しく検証していく必要がある。
小池知事は、豊洲市場への移転については早い段階から、安全性への懸念、巨額かつ不透明な費用の増加、情報公開の不足の3点について疑問を投げかけていた。そのため、11月7日に迫っていた移転を延期させ、再調査を指示していた。今回、その懸念が当たったかたちだ。
移転に当たっては、不透明な事情が多く指摘されている。2014年5月14日付しんぶん赤旗の記事では、土壌汚染対策工事を受注した建設会社17社に、元局長ら都OB64人が天下りしていたことが明らかにされている。また、整備費は当初予算では4316億円だったが、総事業費は少なくとも5884億円に増大していると見られている。
すでに工事が済んでいるのだから、早く移転すべきという論調も少なくないが、築地市場は日本全体にとっても重要な食の窓口だ。安全には特に慎重を期さねばならない。今回、盛り土が実施されていなかった件が明らかになり、移転反対派のみならず移転推進派からも怒りの声が上がっている。
都は、専門家会議や技術会議を設置し、専門家会議による提言に基づき、技術会議で具体的な技術・工法の評価・検討を行い、汚染土壌や汚染地下水の対策をはじめ、液状化対策や地下水管理システムの整備など、総合的な土壌汚染対策をとりまとめたと説明して移転への理解を都民に求めた。そして、その対策に基づいた工事を完了し、専門家による技術会議において土壌汚染対策工事完了の確認を受けたと報告していた。
仮に、汚染について懸念がないレベルにまで安全性が確保される工事を行っていたとしても、それでは専門家会議で検討した意味はなく、都民を欺いていたといわれても仕方ない。
小池知事は12日、都の幹部を集め、どのような経緯で工事が行われたかなど実態の解明をするように指示した。発足間もない小池都政だが、重要な舵取りを迫られる場面となっている。
(文=編集部)