日本中で同時に食べる
クリスマスやお正月は、日本中が同じ時季に同じような食べ物を食卓に揃えます。クリスマスのテーブルにはクリスマスケーキ、お正月の食卓ならおせち料理、なかでもかまぼこが欠かせません。メーカーも通常の製造ラインではつくりきることができません。
一般的な日本のクリスマスケーキは、スポンジを焼いて、クリームを塗り、イチゴやチョコレートなどを飾り付けます。それが日本中の食卓にのぼりますから、ケーキ工場は大量のクリスマスケーキをつくらねばなりません。とても通常の生産体制では不可能です。
大きなケーキ工場では、クリスマスの数カ月前からスポンジを焼いて、クリームを塗るところまでを済ませ、凍結庫で保存しておくのです。ケーキの土台を凍結保存しておくことで安定した生産ができるので、製造コストも下がります。
凍結されていたケーキと徹夜でつくったケーキ。もし店頭でその2種類が並んでいても、現物を見ただけでは見分けがつきません。凍結して大量生産したケーキには、どこにも「凍結してありました」とは表示されず、解凍されて、果物などがトッピングされてから売り場に並びます。
年に一度しかケーキを食べないとしたときに一番おいしく感じられない、しっとりしていない凍結ケーキを食べることになるのです。
凍結技術が進化した結果
小さな町のケーキ店で、職人がひとりしかいない場合、さまざまな種類のケーキをつくることは難しいものです。今日はチーズケーキ、明日はモンブランと、毎日数種類ずつ製造し、冷凍保管ができれば、数多くの種類のケーキを効率よく提供することができます。
クリスマス時季だけではなく、日常的に凍結ケーキで対応している店も多く存在しています。特に回転寿司、チェーンの喫茶店などでは、凍結ケーキを解凍しただけというケースが多くあります。
ケーキ、刺身などを家庭用の冷凍庫で凍結させると、解凍したときにスカスカのスポンジ状になってしまう場合があります。凍結させる途中で、食材の中の水分が凍って大きな結晶になってしまうため、組織を壊してしまうのです。
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