首位陥落危機のマツキヨ、個人薬局「系列化」構想が始動…コンビニより多い調剤薬局が淘汰か
ドラッグストア業界首位のマツモトキヨシホールディングス(HD)が11月下旬、12月1日スタートの事業に関する報道発表を行った。新事業の名称は「マツモトキヨシ調剤サポートプログラム」で、同プログラムに加盟した薬局に対して、同社が医薬品(医療用・大衆薬)やプライベートブランド(PB)などを提供し、店舗の運営ノウハウを支援するというものだ。
その成果が出るのは数年後だが、取り組み自体は業界再編につながりそうな話だ。そこでこの機会に、店舗は目立つがあまり知られていない業界の状況も紹介し、狙いを分析してみたい。
21世紀になって急成長した「6兆円市場」
ドラッグストアは医薬品中心の薬局(主に調剤薬局)とは違い、幅広い商品を揃えて顧客に訴求する。出入口にはドアがなく入りやすいのも特徴で、基本は洗剤やトイレットペーパーなどの日用品や雑貨、食品を安く販売してお客を呼び込み、利益率の高い医薬品と化粧品の販売で収益を高めるビジネスモデルだ。ただし、後述するが、各社によって戦略が異なる。
その市場規模は約6兆1325億円(2015年度/日本チェーンドラッグストア協会調べ)で、百貨店の市場規模の約6兆1743億円(15年度/日本百貨店協会調べ)に匹敵する巨大市場となっている。近年の伸び率は鈍化したが、21世紀になって急成長した市場だ。
長年にわたり業界首位に君臨するのがマツモトキヨシHDだが、競合他社もM&A(合併・買収)などで規模を拡大しており、来春の決算ではウエルシアHDが首位に立つ見通しだ。年間売上高3000億円超の企業が7社あり、特定の地域に強い会社も多い。
たとえば、北海道はツルハHDが強く、九州はコスモス薬品が強い。コスモス薬品は社名から受けるイメージとは異なり食品重視で、全売り上げに占める食品の売り上げが5割を超えている。
つまり、地域色や独自色が強い側面もあり、店によってはお客が食品スーパーと変わらない使い方をしている。利用客の大半が女性客というのも特徴だ。
一方、マツモトキヨシHDが運営するマツモトキヨシは、「HBC」(ヘルス&ビューティーケア)を掲げ、医薬品、化粧品、トイレタリー商品など健康・美容関連商品が全売上高の7割を占める。店舗に応じて商品構成を大きく変えるのも特徴で、都心の「有楽町イトシアプラザ店」はインバウンド(外国人観光客)向けの免税店で、本拠地の「新松戸駅前店」では、HBCを充実させた次世代店「マツキヨラボ(matsukiyo LAB)」も併設している。