首位陥落危機のマツキヨ、個人薬局「系列化」構想が始動…コンビニより多い調剤薬局が淘汰か
8兆円の巨大市場「調剤薬局」に狙い
ここまでは6兆円強のドラッグストア市場の話だが、実はもうひとつの巨大市場がある。7兆9000億円といわれる調剤薬局市場だ。同市場は、病院の近くや駅前商店街の一角に店を構える個人経営の薬局(個人店)が多いのが特徴だ。高齢化により市場が拡大するが、一方で個人店の経営は厳しいという。
今回の説明会では事業会社マツモトキヨシ社長の成田一夫氏が登壇し、次のように説明した。
「たとえば、医薬品の仕入れ価格も大手チェーン店と個人店では大きな格差があるので、当社のノウハウやインフラも提供して支援したい。今回の取り組みはFC(フランチャイズチェーン)店化に近いという声もあるが、プロの薬剤師に対してさらに専門的なアドバイスも行うので、あくまで支援プログラムの提供という位置づけです」
調剤薬局の店舗は全国に約5万8000店あり、コンビニエンスストアの約5万4500店よりも数が多い。筆者は数年前、ビジネス誌「プレジデント」(プレジデント社)の取材で大手ドラッグストアの主だった経営者に話を聞き、当時「今後は各地の個人経営の薬局が淘汰されて、大手の草刈り場になると予想する声も」と記した。マツモトキヨシの動きはその一例といえるが、個人店支援の側面もある。
大衆薬や日用品の販売価格を個人薬局の店頭で調べると、大手ドラッグストアの販売価格よりも高い。これも仕入れ値格差が一因と推察される。効率性で劣る個人店には、大手メーカーの販売部員もあまり立ち寄らない。そうした不満も薬局店主から聞いたこともあり、条件面で合意すれば、一気に「マツキヨ新事業」への加盟店が増えそうだ。
得意な「ビッグデータ」収集にも意欲的
競合に比べてマツモトキヨシの強みは、もうひとつある。成田氏はそれを「4200万人超のビッグデータ」だという。国内に1544店(グループ計)ある店頭でお客が買物時に使う「マツモトキヨシポイントカード」の会員約2370万人のほか、「マツモトキヨシ公式アプリ」(約450万ダウンロード)、LINEの「マツモトキヨシ公式アカウント」の顧客データなどを合わせた数字だ。これらのデータの中身を分析して商品開発や品揃え、新たな店舗展開にも反映してきた。