エアビーやウーバーの台頭にまったく追いつけない日本…コストゼロで異常に高い生産性
AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット化)が、世界の産業構造を大きく変えようとしている。
コールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)・ジャパン会長の斉藤惇氏は、現在の日本社会の在り方は、AIやIoT時代に対応できていないと警鐘を鳴らす。産業構造の大変化を乗り越え、日本経済が成長するためには、企業だけでなく、社会全体の変化が求められる。
斉藤氏は1995年に野村證券副社長に就いて以来、20年以上にわたって金融業界の第一線で日本企業の経営の変遷に向き合うと同時に、経営トップとして組織の指揮を執り続けている。絶え間なく変化する経済環境のなかで、一経営者として、いかなる哲学を持って経営にあたってきたのだろうか。
企業を追い込む重要性
片山修(以下、片山) 日本ではいま、ホンダとヤマハの提携、日産自動車の三菱自動車工業買収、トヨタ自動車とスズキの提携など、ひと昔前には予想もできなかった企業提携の事例が出てきています。
斉藤惇氏(以下、斉藤) 大胆な提携が進むことは、いいことなんですよ。追い込まれて変化したということですからね。大きく変化すれば、内部には混乱も生じますが、競争に勝ち、成長するためにはつねに変化が必要です。つまり、外部からの変化を取り込ませるために、企業を追い込むことが大事なんです。
片山 企業が追い込まれるといえば、大赤字に陥ったり、為替変動や金融危機、大災害といった厳しい外部環境の変化にさらされたり、社外取締役に厳しく追及されるといったことでしょうね。こうした“危機”を乗り越えることによって、企業も経営者も強くなるんですね。
斉藤 そうです。外部から企業を成長させようとすれば、いかに追い込むかを考えなければいけません。僕は、株主の力で企業を追い込む仕組みを、確立しようとしてきました。
株主の判断には、金銭的な損得が絡みます。正直なところ、株主はそれほど企業のことは考えていなくて、株価が上がってほしい。儲けたい。だからこそ、必死で企業に文句を言うのです。それでも、その文句が企業を追い込めば、企業は変化し、成長につながります。
片山 しかし、日本では株主が儲けたいために企業に文句をいうことに対して「ケシカラン」という風潮がありますね。
斉藤 「ケシカラン」かどうかは、それほど問題とは思いません。受け入れる企業は生き残る。反対に、無視する企業は後日従業員を整理したり、公的資金を導入するなど社会的負債を負うことになります。
そうだとすれば、株主からの声を受け入れ、対策を講じざるを得ない仕組みにしたほうがいいですよね。