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片山修のずだぶくろトップインタビュー 第5回 斉藤惇氏(KKRジャパン会長)後編

エアビーやウーバーの台頭にまったく追いつけない日本…コストゼロで異常に高い生産性

構成=片山修/経済ジャーナリスト、経営評論家

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斉藤 ええ。重厚長大、大量生産型から抜け出せていない。IoTやAIの時代になると、経営や組織の在り方がまったく違ってきます。つまり、フラットな組織、非中央集権的な組織が求められる。新しい経営や組織へシフトできるかどうかが問われるわけですが、日本は残念ながら遅れています。

 たとえば、自動車メーカーや電機メーカーといった大手製造業は、世界に数十万人規模の従業員を抱えています。一方のグーグル、エアビーアンドビーなどのIT企業やソフトウエアメーカーは、数千人規模です。エアビーアンドビーやウーバーといったシェアリング・エコノミー関連のビジネスは、今勢いがありますが、やっていることは、マッチングだけです。

片山 しかも、そのマッチングもコンピュータによって自動で行っていますよね。部屋を貸したい人と泊まりたい人、クルマに乗りたい人と乗せたい人など、需要と供給の最適解を、自動で導き出す仕組みをつくった。

斉藤 エアビーアンドビーやウーバーなどのビジネスモデルは、限界コストが極端にゼロに近い。資本投入量、労働投入量も低い。一方で生産性は異常に高い。だから難しいのは、就業が増えるかというと、全然増えないことですよ。

片山 稼ぐ力はあるけれど、雇用はあまり増えないんですね。

斉藤 資本は使わないし、金利は発生しない、失業率は改善しない。それでも生産性はあがるという、新しいモデルなんですよ。このモデルに対して、日本は非常に反応が遅いし、どちらかというと抵抗している。既得権益者が反対しますからね。

片山 実際、たとえばウーバーのようなシェアリング・エコノミーが普及すると、自動車は売れなくなりますよ。そうすると、自動車メーカーの従来のビジネスモデルは通用しなくなります。

斉藤 だからといって、社会の変化に抵抗していてはいけない。クルマを売らなくても稼げるビジネスモデルをつくり、変わっていかないといけないんです。ガソリン車は電気自動車に変わるし、クルマはいずれ自動運転になる。その変化に、企業の経営、さらには日本の社会を、合わせていかないといけない。

片山 ところが、それが遅いというわけですね。

斉藤 既得権益者が、変化を拒んでいるからです。国会議員も既得権益者代表のような人ばかりだから、国が変わらないんです。

片山修/経済ジャーナリスト、経営評論家

片山修/経済ジャーナリスト、経営評論家

愛知県名古屋市生まれ。2001年~2011年までの10年間、学習院女子大学客員教授を務める。企業経営論の日本の第一人者。主要月刊誌『中央公論』『文藝春秋』『Voice』『潮』などのほか、『週刊エコノミスト』『SAPIO』『THE21』など多数の雑誌に論文を執筆。経済、経営、政治など幅広いテーマを手掛ける。『ソニーの法則』(小学館文庫)20万部、『トヨタの方式』(同)は8万部のベストセラー。著書は60冊を超える。中国語、韓国語への翻訳書多数。

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