エアビーやウーバーの台頭にまったく追いつけない日本…コストゼロで異常に高い生産性
片山 どうして、若いころから哲学に興味があったのですか。
斉藤 さあ、なぜでしょう。好きなんですよ。その種のものは、だいたい全部読んでますよ。もっとも、アメリカやヨーロッパの資本論だって、キリスト教のプロテスタンティズムに基づいている。シュンペーターの経済思想だってキリスト教がベースにありますよね。
片山 日本の商習慣も、仏教に基づいているといわれますね。
斉藤 そうですね。ただ、宗教観に基づいているといっても、僕はインセンティブを求めて働くというのは、動機として正しいと思うんですよ。
片山 インセンティブがないと、誰も働きませんよね。
斉藤 インセンティブを求めるというと、「無」と矛盾するかもしれませんが、経営者が報酬を得るために一生懸命働くことは、僕は正しいと思うんです。ただ、得た報酬は、リリースするべきなんですよね。金持ちになって地位や名声を得ることが、動機であるべきではないと思っています。
もちろん、豪華な買い物をしてもいいですよ。高級マンションや船を買うのは構いませんが、僕にとってはインプレッシブではない。稚拙だなと思うだけです。むしろ、お金ではなくて、社会貢献しているような人のほうが、素晴らしいなと思いますね。
【斉藤さんの素顔】
片山 モノに価値を見いださないということはうかがいましたが、では、食についてはいかがですか。好きな食べ物はなんですか。
斉藤 なんでも食べますよ。まったくグルメじゃないです。毎日芋を食っててもいいと思うくらい。
片山 行ってみたい場所や再訪したい場所はありますか。
斉藤 そうねえ、どこでもいいよ(笑)。
片山 でも、もう1回行ってもいい場所はあるでしょう。
斉藤 うーん、スイスの山とか、カナダの北のほうですかね。日本の京都なんかとは、スケールが違いますよね。
片山 最近読んだ本はありますか。
斉藤 『限界費用ゼロ社会<モノのインターネット>と共有型経済の台頭』(ジェレミー・リフキン著、柴田裕之訳/NHK出版)を読みました。非常にインプレッシブですが、資本主義をある程度否定していますから、その意味では、けっこうややこしいですよ。
(構成=片山修/経済ジャーナリスト、経営評論家)