厨房で豆乳を固め、できたての温かい豆腐を朝食で提供しているホテルがあります。最近はチェーンの定食屋さんでも、厨房で豆腐をつくっている店があり、削りたての鰹節とネギを乗せて冷や奴を食べることができます。
できたての豆腐は温かく、食べると大豆の甘みを感じることができ、本当においしいです。
スーパーマーケットで特売となっている豆腐などは、冷や奴で食べると、大豆の甘みを感じることができず、単なる“白い塊”のようなものもあります。おいしい豆腐であれば、私は毎晩食べても飽きないと思っています。
豆腐のおいしさは、豆乳のおいしさです。そして豆乳のおいしさは、大豆のおいしさです。大豆の味をいかに豆乳に引き出し、豆乳を固めるために使用する凝固剤の味を残さないかが、豆腐職人の腕の見せ所だと思います。
木綿豆腐でも、絹ごし豆腐でも、栄養成分表示を確認し、「にがり」を使用してタンパク値が一番高い商品を選べば、おいしい豆腐にありつくことができます。
なかには栄養成分表示がない豆腐もありますが、2015年4月に施行された食品表示法では、表示を義務づけています。20年までは猶予期間になっていますが、豆腐を食べる消費者のことを考えれば、一日も早く栄養成分表示を行うべきです。
また、栄養成分表示がされている豆腐でも、「食塩相当量」と書いてある商品がお勧めです。ナトリウム×2.54=食塩相当量ですので、食塩ではなくナトリウム量を表示している商品は、見かけの塩分値が少なく見えてしまいます。お客の健康に配慮している豆腐は、すなわち栄養成分と食塩相当量が表示されている商品です。
豆腐は本来日持ちしない
ラッパを吹きながら豆腐を売っていた時代は、豆腐は当日に食べきるものでした。現代ではスーパーで販売するために、物流に乗せて全国に運ばれるようになり、日持ちを長くする必要があります。衛生的な工場で製造している場合は日持ちも長くおいしいですが、消費期限が3日以上の豆腐は、日持ちさせるために必要以上に加熱を行っている可能性があります。加熱しすぎた豆腐は、大豆の風味が消えてしまっていることもあります。
近くに昔ながらの豆腐店がある場合、ぜひ豆乳とにがりを分けてもらい自宅で豆腐をつくってできたてを味わってみてください。通信販売でも手づくり豆腐セットが販売されています。豆乳を鍋で温め、浮いてくる湯葉をわさび醤油で食べると本当においしいです。その後に豆腐も食べられ、一度で二度おいしい体験ができます。
(文=河岸宏和/食品安全教育研究所代表)
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