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江川紹子の「事件ウオッチ」第72回

【MX「ニュース女子」問題】で謝罪した東京新聞 曖昧な反省ではなく事実の検証を

文=江川紹子/ジャーナリスト
【MX「ニュース女子」問題】で謝罪した東京新聞 曖昧な反省ではなく事実の検証をの画像1問題の放送があった「ニュース女子」#91(画像は「ニュース女子」DHCシアターWebサイトより

「反省」を辞書で引いてみる。

〈自分の行いをかえりみること。自分の過去の行為について考察し、批判的な評価を加えること〉(広辞苑)

〈過去の自分の言動やありかたに間違いがなかったかどうかよく考えること〉(大辞林)

 ならば、東京新聞は自身のどのような「行い」、いかなる「言動やありかた」を問題にしているのだろうか。

東京新聞が謝罪した「ニュース女子」問題

 沖縄の米軍基地建設に反対する運動をしている人々を、「過激派」「テロリストみたい」などと非難した東京メトロポリタンテレビジョン(MXテレビ)のバラエティー番組「ニュース女子」に関し、東京新聞が2月2日付の1面で反省と謝罪を表明した。

 深田実・論説主幹名で書かれたそのお詫び文は、同紙の長谷川幸洋論説副主幹が司会を務めたこの番組の内容が、同紙の社論とは異なるうえ、事実に基づかない論評があると批判。それが沖縄への偏見を助長し、沖縄の人々の心情を傷つけ、基地問題が歪めて伝えられることを懸念したうえで、こう書いている。

〈他メディアで起きたことではあっても責任と反省を深く感じています。とりわけ副主幹が出演したことについては重く受け止め、対処します〉

 これだけでは、同紙が自身のどのような行為、言動、態度に問題を感じているのか、よくわからない。肝腎の長谷川氏が今回の問題についてどう考えているのかが、紙面ではまったく明らかにされていないことが、この謝罪文をさらにわかりにくくさせている。

 文章には日本語の助詞の使い方がおかしいところもあり、かなり混乱した状況でつくられたように思える。

 同紙には250件を超える批判や見解表明を求める電話、FAX、メール、手紙が寄せられたという。さらに、作家の佐藤優氏が、同紙の連載「本音のコラム」で「長谷川幸洋氏が、沖縄ヘイト番組に関与したことについて本紙は社論を明らかにすべきだ」と書いたことで、同紙としてはとり急ぎ対応する必要を感じたのだろう。

 そうであっても、「反省」を語る以上は、自身のいかなる行為や態度を問題にしているのかは、やはり明確にしておくべきではないのか。

 それは、長谷川氏が社論と異なる見解を、他メディアで自由に語ることを許容してきたことだろうか。

 安倍政権に対し常にアンチの立場に立つ東京新聞に対し、長谷川氏の発言は政権寄りだ。憲法に関しても、護憲を掲げる同紙の社説に対し、長谷川氏はテレビなどで改憲を主張してきた。いわば、産経新聞の論説委員が、慰安婦問題の日本政府の責任を外で追及しているようなもので、東京新聞の社内には、長谷川氏の“活躍”を苦々しい思いで見ていた人もいるかもしれない。

 しかし、新聞は政党の機関紙とは違うのだから、多様な意見の持ち主を内包することはむしろ望ましいし、それを外にあっても自由に語れることは、東京新聞の懐の深さや言論の自由を尊重する姿勢を印象づけてきた。

 今回のことも、同紙が沖縄での新基地建設を批判する立場から報道を続けているのに、長谷川氏が個人として政府を後押し、基地建設反対派を批判する論陣を張ったということであれば、それは見解の違いであり、非難には当たらない。

「ニュース女子」による悪質な印象操作

 しかし今回は、そういう主張や路線の対立ではない。問題の本質は、事実への向き合い方だ。

江川紹子/ジャーナリスト

江川紹子/ジャーナリスト

東京都出身。神奈川新聞社会部記者を経て、フリーランスに。著書に『魂の虜囚 オウム事件はなぜ起きたか』『人を助ける仕事』『勇気ってなんだろう』ほか。『「歴史認識」とは何か - 対立の構図を超えて』(著者・大沼保昭)では聞き手を務めている。クラシック音楽への造詣も深い。


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