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2023.07.05 00:01
2017.06.29 00:03
中西貴之「化学に恋するアピシウス」
流行のジビエ料理、E型肝炎の危険…シカ肉、脂肪少なく老化や病気抑制のスーパーフード
それによって、タンパク質分解による細胞の老化や病気を抑える効果があるとされています。さらには、運動中に筋肉で生成する乳酸を緩衝作用によって中和することで、筋肉が酸性化することを防ぎ、運動能力の向上につながる可能性も指摘されています。
また、十分に研究が進んでいないものの、交感神経系に作用することで血糖や血圧を低下させる効果も指摘されています。カルノシンはブタロースにもシカと同程度の量が含まれていますが、前述の通り、脂肪の良質さと少なさでシカのほうが栄養バランスの点では勝っています。
カルノシンの構造式
ジビエ料理はE型肝炎に注意…死に至ることも
とはいえ、野生生物を食べるときには気をつけなければならないことがあります。それは、E型肝炎です。E型肝炎はウイルスの感染によって引き起こされる急性肝炎で、発熱、嘔吐などの消化器系症状を伴い、悪化すると劇症肝炎となって、死に至ることもある恐ろしい感染症です。
日本においては近年増加傾向にあるため、当局も警戒している疾患です。日本での増加の理由はウイルスに汚染されたブタ、イノシシ、シカの肉やレバーなどの内臓を加熱不十分な状態で食べたことによるものが多くを占めるということがわかっています。
原因動物別では、ブタ、イノシシに次いで多いのがシカです。シカの肉は脂肪が少ないために熱が通りやすく、ブタやイノシシよりも感染を防ぎやすいという利点があります。
シカ肉は、「肉を食べた」という満足感があるにもかかわらず、良質な脂肪を含み、健康増進作用もある素晴らしい食材です。過剰に規制されることなく食べられるように、適切な調理をしてジビエを楽しみたいですね。
(文=中西貴之/宇部興産株式会社 環境安全部製品安全グループ グループリーダー)
【参考資料】
「鹿肉普及委員会」
「最近のE型肝炎の増加について(2016年4月27日現在)」(国立感染症研究所)
『食品機能性の科学』(産業技術サービスセンター)
『マギー キッチンサイエンス -食材から食卓まで-』(共立出版/Harold McGee 著、香西みどり監訳、北山薫、北山雅彦訳)
『食べ物はこうして血となり肉となる~ちょっと意外な体の中の食物動態~』 野菜を食べると体によい。牛肉を食べると力が出る。食べ物を食べるだけで健康に影響を及ぼし気分にまで作用する。なんの変哲もない食べ物になぜそんなことができるのか? そんな不思議に迫るべく食べ物の体内動態をちょっと覗いてみよう。
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