北朝鮮は9月3日、「大陸間弾道ミサイル(ICBM)搭載用の水爆実験に完全に成功した」という声明を発表した。これを受けて、日本だけでなく世界中に激震が走っている。専門家の間にも「水爆実験はほぼ成功」との見方があり、もし核弾頭の小型化にも成功していれば、アメリカにとっては脅威となる。
北朝鮮の暴挙に対して、在日コリアン社会からは不安視する声も多い。筆者の知り合いの在日コリアンは、一様に「バカげている」「もうやめてほしい」「肩身が狭くなる」と語っている。
朝鮮総連に韓国民団が抗議「金正恩はならず者」
そんななか、在日朝鮮人によって組織される在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)は北朝鮮を擁護する姿勢を変えていない。在日本大韓民国民団(韓国民団)の中央本部は5日、朝鮮総連本部前で抗議活動を行い、団長の呉公太(オ・ゴンテ)名義の抗議文を読み上げた。
この抗議活動は、多くの警察官や警察関係の車両が警備態勢を敷く中、ものものしい雰囲気で2回に分けて行われた。力強く抗議文を読み上げた後で「北朝鮮はミサイル発射を中止しろ」「北朝鮮は核兵器を放棄しろ」「北朝鮮は国連と韓国に従え」「総連は民団とともに北朝鮮の暴挙を阻止しろ」とシュプレヒコールが上がった。
抗議文には以下のように明記されており、金正恩朝鮮労働党委員長を強く批判している。
「民団は、核やミサイル開発を即時に止め、膨大な時間とカネを飢餓にあえぐ自国民救済に充てるべきだと再三忠告してきた。しかし、金正恩は聞く耳を持たない『ならず者』であることを自らはっきりと全世界に証明した。私たちは二度と核実験やミサイル発射を強行しないよう国際世論と連帯すると同時に、世界各国に対し、暴走を止める共同歩調を取るよう強く求める」
しかし、この抗議活動に対して朝鮮総連は完全に沈黙。抗議文を受け取ることもなかった。日本内における南北朝鮮関係者の溝を深く感じた瞬間である。
日本での韓国系新聞媒体としては、韓国民団の機関紙「民団新聞」や「統一日報」などがある。しかし、韓国系新聞の記者同士では雑談することもあるが、北朝鮮系の「朝鮮新報」とはほとんどコミュニケーションがない状態だという。
朝鮮総連は全盛期には50万人以上の会員を有し、日本社会でも影響力を持っていた。政治的にも、旧社会党や自民党に金日成や金正日のシンパがいたとされる。しかし、関係者によると、今や会員数は多く見積もっても5万人程度だという。
朝鮮学校も次々と統廃合するなど、衰退の一途をたどっている。学校を維持できるほどの経済力がなく、生徒数も減少しているためだ。かつては豊富な資金力をバックに活動していた朝鮮総連だが、今は全盛期ほどの勢いはない。
朝鮮総連は、その資金を本国に送金してきたとされる。相次ぐ弾道ミサイルの発射や核開発の膨大なコストにも、朝鮮総連系のマネーが少なからず貢献しているといっていいだろう。物心両面にわたって北朝鮮を支えてきた朝鮮総連だが、在日コリアン社会とどのように向き合ってきたのか、今一度考えるときにきているのではないだろうか。