9月15日、東京地検特捜部は2つの市民団体から出されていた、財務省と国土交通省に対する背任罪および公用文書等毀棄罪の訴えを受理したことを発表し、立件捜査を大阪地検特捜部に移送することを通知した。なお、背任罪は市民団体「森友告発プロジェクト(現・森友・加計告発プロジェクト)」(藤田高景共同代表)、公用文書毀棄罪は同「健全な法治国家のために声をあげる市民の会」(八木啓代代表)がそれぞれ提起していた。
東京地検では、9月11日に特捜部長が森本宏氏(前任は吉田安志氏)に交代した直後、約4カ月間店晒しにされていた告発状が受理され、大阪地検に移送された。森友問題の本丸は、安倍晋三首相と夫人・昭恵氏が、森友学園の小学校建設をめぐり便宜供与に動き、官僚がそれに応えて国有財産を、大量の埋設ごみを理由にただ同然の格安で払い下げた点にある。
ところが、この案件を担当している大阪地検は、払い下げの権限を有していた財務省近畿財務局、同理財局そして国交省大阪航空局の捜査すらせず、本丸から外れた補助金詐取問題で森友学園元理事長の籠池泰典氏と妻をいわば別件逮捕し、有識者から疑問を投げかけられていた。
大手メディアの記者によると、大阪地検は財務省と国交省の背任罪立件の動きを見せていたが、それを止めていたのは東京地検だといわれていた。ところが今回、その東京地検特捜部が部長の交代を機に、告発状を受理したことによって、その障害は取り払われたことになる。
市民からの主要な告発は上記のほかに、「『森友学園問題』を考える会」(木村真<豊中市議>代表)が提出した告発状(3月)、約240人の弁護士らが提出した告発状(7月13日/現状で未受理)であり、基本的には計4本の告発状について大阪地検は捜査を行うことになる。
こうした状況のなか、安倍首相が衆議院解散・総選挙に踏み切ったが、今回の告発状の受理によって、背任罪と公用文書毀棄罪の容疑の中心人物である佐川宣寿現国税庁長官の逮捕・罷免へと続けば、安倍首相の不正関与も問われることになる。森友問題から見た時には、安倍首相による衆議院解散は、告発受理と今後の展開を見越した自己保身策といってもよい。
一方、今回の東京地検特捜部による告発状の受理、大阪地検への移送は、安倍首相による国家の私物化といえ、「国家が崩壊する」(福田康夫元首相)という懸念も高まっている。