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大江英樹「おとなのマネー学・ライフ学」

「元を取りたい」で余計に損をする人たち

文=大江英樹/オフィス・リベルタス代表
「元を取りたい」で余計に損をする人たちの画像1「Thinkstock」より

 たとえばあなたが映画を観に行ったとします。評判の高かった映画だけど、実際に始まって30分たちましたが、実に面白くない映画です。さあ、そんなときあなたはどうしますか? おもしろくない映画だから席を立って映画館を出ていくか、それとも1800円も払って入ったのだから、もったいないので最後まで観るか。恐らく多くの人は途中で席を立つことをせず、「もったいないから」といってずっと映画館に居ることが多いでしょう。

 ここで重要になってくるのが、「もったいない」「元を取りたい」という感情です。ところが残念なことに、この場合あなたは絶対に元は取れません。なぜなら、すでに払ってしまっている1800円のチケット代は、映画館を出ようが、最後まで観ようが戻ってきませんし、映画自体もつまらないので、とても払ったお金の価値には見合わないからです。したがって、あなたの取るべき正しい合理的な行動は、すぐさま映画館を出ることなのです。

「元を取りたい」で余計に損をする人たちの画像2『お金の常識を知らないまま社会人になってしまった人へ』(大江英樹/PHP研究所)

 この場合のあなたの損得を計算してみましょう。

1.最後まで映画を観る→ 1800円と2時間が無駄になる
2.映画館を出る→ 1800円とすでに観た30分の時間が無駄になる

 つまり、どちらにしても1800円の損の部分は同じなのです。だとすれば、ここで映画館を出ることによって残りの1時間半を仕事して稼いだり、ほかにもっと楽しいことをしたりするほうが、つまらない映画を観続けて残りの1時間半を無駄に過ごすよりは少しでも損失を減らすことはできます。

 ところが、こう考える人もいるでしょうね。

「そりゃ確かにつまらない映画を最後まで観るのは時間の無駄かもしれないけど、少なくとも最後まで観たほうが、払ったお金の元は取れると考えるべきじゃないの?」

 そう思いたくなる気持ちはよくわかります。でも「元を取る」というのは払ったお金に対して、それと同等か、それ以上の満足が得られることをいうのです。この場合、映画がつまらなくて満足していないのですから、決して元を取ることはできません。少なくとも1800円の損は確定しているのですから、ここからはどうすればそれ以上に損をしないですむかを考えるべきです。だとすれば、つまらない映画を観続けるよりももっと有意義なことをしたほうが、トータルでの損失は少なくなるはずです。

大江英樹/経済コラムニスト

大江英樹/経済コラムニスト

1952年、大阪府生まれ。野村證券で個人資産運用業務や企業年金制度のコンサルティングなどに従事した後、2012年にオフィス・リベルタス設立。日本証券アナリスト協会検定会員、行動経済学会会員。資産運用やライフプラニング、行動経済学に関する講演・研修・執筆活動を行っている。『定年楽園』(きんざい)『その損の9割は避けられる』(三笠書房)『投資賢者の心理学』(日本経済新聞出版社)など著書多数。
株式会社オフィス・リベルタス

Twitter:@officelibertas

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