世界経済の回復や産油国による減産を背景にした国際原油相場の持ち直しで、石油・石炭などの原料および製品価格が上昇した。鉄鋼生産に使う原料炭は昨年前半の平均に比べ約8割高。銅・鉄鉱石も上がった。銅については、電気自動車(EV)の思惑が働いている側面もある。
そして資源価格の回復は、総合商社の業績も押し上げた。
“資源商社”の異名をとる三菱商事と三井物産は、資源価格の下落で2016年3月期は初の最終赤字に転落した。それが一転して資源価格の上昇によって17年3月期にV字回復。そして18年3月期も各社は最終増益を見込んでいる。
総合商社大手5社の18年3月期の最終利益は以下のとおり。
・三菱商事…5000億円(前期比13.6%増)
・伊藤忠商事…4000億円(同13.6%増)
・三井物産…4000億円(同30.7%増)
・住友商事…2800億円(同63.8%増)
・丸紅…1700億円(同9.4%増)
※各社とも国際会計基準
三菱商事、純利益が5000億円の大台か
三菱商事の連結純利益は、過去最高の5000億円になる。期初予想の4500億円から上方修正した。これまでの最高益は、新興国ブームに沸いた08年3月期の4712億円。それを今回、10年ぶりに更新する。
原料炭を含む金属事業の部門利益は32%増の1950億円を見込む。同部門が全社の最終利益の39%を占める。自動車販売などの機械事業は2.5倍の750億円になる。東南アジアを中心とする自動車の販売台数が増えたことによる。通期業績の上方修正に伴い株主還元を拡充し、年間配当を前期実績から15円増の95円とする。
伊藤忠も過去最高
伊藤忠商事も連結純利益は4000億円と過去最高になる見込み。青果物の生産販売など食料事業の部門利益は9%増の770億円。ファミリーマート統合に伴う持分法投資利益も増える。鉄鉱石や石炭などの金属事業は22%増の550億円。資源も業績に寄与したが、それでも非資源比率が88%(17年3月期は86%)になる。通期業績は上振れする可能性がある。
格付け会社のムーディーズ・ジャパンは、伊藤忠の格付けをBaa1からA3に一段階引き上げた。伊藤忠がA格を取得するのは98年5月以来20年ぶり。総合商社では三菱商事がA2を取得しており、三井物産はA3だ。