一般財団法人国土計画協会が主催する、増田寛也元総務相ら民間有識者をメンバーとした「所有者不明土地問題研究会」が昨年12月13日、最終報告を取りまとめた。同研究会では、所有者台帳(不動産登記簿等)により所有者がただちに判明しない、または判明しても所有者に連絡がつかない土地を「所有者不明土地」と定義。国土交通省の地籍調査をベースに、2016年時点の所有者不明土地を推計した結果、その面積は約410万ha(ヘクタール)に及び、九州全体の土地面積である約367万haを超えるという驚くべき試算結果が発表された。
具体的には、国土交通省が実施した2016年度の地籍調査では、563市区町村の62万2608筆で登記簿上の所有者の所在が不明な土地は20.1%だった。これを総人口、65歳以上死亡者数との相関関係を用いて拡大推計すると全国の所有者不明率は20.3%で、所有者不明土地面積は約410万haとなった。
さらに同報告書では以下の将来推計も行った。
(1)人口減少・少子高齢化が進み、40年には全国896の市区町村が「消滅可能性都市」に該当する
(2)13年現在、全国で820万戸の空き家が存在しており、今後、世帯数の減少等により、20年後の33年には、空き家が2150万戸まで急増
(3)土地の相続候補者へのアンケート調査の結果で、20~40年に発生する土地相続のうち、約27~29%が未登記になる可能性がある
(4)高齢化の影響も伴い、死亡者数は160万人を超える
以上より、20年から40年に発生する所有者不明土地面積は約310万haに相当すると試算している。これと16年時点の約410万haを合わせた約720万haというのは、北海道全体の土地面積である約780万haに匹敵する。かつてのバブル経済時代にあった「不動産神話」を記憶している世代には、これほど土地が無価値化するとは相当な衝撃だろう。
同研究会では、所有者不明土地が引き起こす経済損失に関する推計も行っており、16年の損失額は約1800億円、17~40年の累積損失額は6兆円規模に及ぶとしている。
さらに、問題は所有者不明土地にとどまらない。都内の不動産デベロッパー関係者は、「所有者不明の物件は、分譲マンションでも増加している」という。土地の場合には、過疎地や農地、山林などの資産価値が低く、相続の煩雑さやコスト、相続後の管理を考えた場合、相続を放棄するケースが増加している。また、都市部の住宅でも、土地面積が狭く、活用が難しかったり再建築が不可能なケースでは、相続を放棄するケースが増えているという。
マンションの所有者不明物件
深刻なのは、分譲マンションで所有者不明物件が増加していることだ。
「土地と同様に相続人にとって利用価値が低く、建物の老朽化によって資産価値が低下しているマンションなどで、所有者不明物件が急増している」(同)