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富家孝「危ない医療」

抗がん剤、年間738億円分も廃棄…風邪薬の処方、世界的に廃止の動き

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「Gettyimages」より

 昨年11月、国立がんセンターと慶應義塾大学大学院の岩本隆特任教授の調査で、抗がん剤が年間に約738億円分も廃棄されていると発表され、大きな反響を巻き起こした。

「まさか、こんなに無駄にされているなんて。本当にもったいない」というものから、「残薬を捨てずにほかの患者さんに回すことはできないのか」など、一般の反応はさまざまだが、いずれも額の大きさに驚いたものである。ほかのクスリを合わせれば、薬全体では莫大な額が無駄になっているのだ。

 今回の調査は、昨年7月から今年6月までに販売された100種類の抗がん剤の廃棄率などのデータが元になっている。それによると、全国で1年間に廃棄される抗がん剤の割合は、患者に投与された量全体の9.8%に達していて、その額がおよそ738億円なのだという。

 そして、このうちの約8割にあたる601億円は、病床数が200床以上の病院(いわゆる大学病院などの大病院)で廃棄されたという。岩本教授は「安全性を確保すれば、残薬を使うことで国の医療費を年間で500億円ほど削減できるのではないか」と述べている。

 じつは、厚生労働省はすでに「オプジーボ」など高額な抗がん剤使用の無駄を減らすための調査、改善策の検討に入っている。今回の発表はその一環といっていい。

 現在、抗がん剤はこれまでの「細胞無差別攻撃式」のものから、オプジーボのような「免疫チェックポイント式」のものへの転換期にある。前者はほとんど効果がないと考えられたが、後者は効果が認められ、これからのがん治療には欠かせないものになりつつある。ただし、開発に莫大な金額が投入されていて、高額である。これらを保険適用していけば、国の医療費はパンクしてしまう。

 たとえば、液状の抗がん剤は「バイアル」というガラスの瓶に入っており、オプジーボの場合は1瓶100ミリグラムで約36万5000円もする。これを患者さんの状況に応じて使用量を調整して使うわけだが、使用後3分の1残ったとしたら、それは廃棄されることになる。メーカーが開封後は細菌汚染の恐れがあるとしているからだ。とすると、3分の1廃棄すれば、10万円以上が無駄になる。

 こうした実態をどう改善し、残薬再使用のガイドライン(たとえばバイアル薬の場合は使用した量だけ請求できるようにするなど)をどのようにつくるかが今後の課題になる。

残薬は年間1000億円以上か


 では、抗がん剤以外の薬はどうだろうか。

 正確な統計はないが、現在、年間の残薬は1000億円を軽く超えているとみられている。とくに、降圧剤、コレステロール降下剤、血糖降下薬など、高齢者が飲み残す薬の額は年間500億円以上になるという。処方された全量の半分が無駄になっているともいわれている。

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