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柳谷智宣「気になるITトレンドの“裏”を読む」(第1回)

アマゾン、課税&送料有料化開始とライバル・ヨドバシ浮上で迎える転換点

文=柳谷智宣/ITライター
アマゾン、課税&送料有料化開始とライバル・ヨドバシ浮上で迎える転換点の画像1ウェブサイト「amazon.co.jp」より

 PCデビューは30年前に発売されたシャープのX1という、筋金入りのデジタル中毒であるITライターの柳谷智宣氏。日々、最新デジタルガジェットやウェブサービスを手当たり次第に使い込んでいる。そんな柳谷氏が、気になる今注目のITトレンドの裏側とこれからを解説する。

 ネット通販大手のアマゾンが肥大化を続け、国内企業がじり貧となっている。即日発送や送料無料など、ユーザーとしてはこれ以上ないサービスのため、人気は高い。利益の多くを将来の投資に回したり、顧客第一といったビジネスモデルはさんざん紹介されているので置いておき、今回は別の視点からチェックしてみたい。

 まず、国内企業にとっては厳しく、アマゾンにとって美味しいのが税金だ。2009年に東京国税局は米アマゾン・ドット・コムの関連会社に140億円の追徴課税処分を下した。しかし、アマゾン側は本社のあるアメリカに税金を納めているということで抗弁、結局国税局は10年に引き下がっている。要は、アマゾンジャパンは販売や物流の委託を請け負っている形なのだ。

 しかも、現在、海外の企業がインターネットで販売する電子書籍などのデータには消費税をかけることができない。国内企業が不利な戦いを強いられているのは当たり前の状況といえる。14年には、この電子データに消費税を課税できるように法令が改正される見込みだ。「amazon.co.jp」と日本ドメインで、日本人を相手にビジネスをしているのだから、国税局には消費税はもちろん、法人税もきっちり取ってほしいところだ。

●疲弊した運送会社が値上げを要請

 次に、送料。無料で配送できていたのは、運送会社と激安価格で法人契約を結んでいたため。この数字は公表されていないが、恐ろしく低い数字のようだ。とはいえ、トータルでは膨大な個数を配送することになるので、企業として売り上げは立つ。「現場が駆けずり回ればなんとかなる」と今までは頑張ってきたようだ。しかし、それも限界に来て、疲弊した運送会社がアマゾンへ値上げを打診。アマゾンは低価格商品の無料配送を中止することになった。現在は、「あわせ買い」プログラムが実施されており、2500円以上まとめて注文すれば送料が無料となった。

 どちらも、国内企業にとって不利な条件だったが、少しずつ是正されつつある。そんな中、ヨドバシカメラが書籍のインターネット通販に参入することになった。2月からといわれていたが、1月18日から前倒しスタート。「ヨドバシ・ドット・コム」では約8万5000タイトルを揃える充実ぶりで、東京、横浜、大阪、京都などの周辺地域では注文当日に無料配送してくれる。しかも、3%のポイント還元付き。1強の状態よりは、複数の企業がしのぎを削ってくれるほうがユーザーとしても安心だし、ありがたい。ぜひ、8万5000点と言わず、アマゾン並みのタイトル数を目指していただきたいところだ。
(文=柳谷智宣/ITライター)

柳谷智宣/ITライター

柳谷智宣/ITライター

やなぎや・とものり/1972年12月生まれ。1998年からITライターとして活動しており、ガジェットからエンタープライズ向けのプロダクトまで幅広い領域で執筆する。2018年から、NPO法人デジタルリテラシー向上機構(DLIS)を設立し、ネット詐欺の被害をなくすために活動している。
ITライター・柳谷智宣 株式会社レベリングプロフィールサイト

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