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老人ホームや介護ヘルパー、認知症高齢者への非人道的扱いや貴重品窃盗の実態 防止策は?

文=尾藤克之/経営コンサルタント
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老人ホームや介護ヘルパー、認知症高齢者への非人道的扱いや貴重品窃盗の実態 防止策は?の画像1「Thinkstock」より

 国民生活センターは9月11日、認知症などで判断能力が不十分な高齢者の消費者トラブルに関する相談が昨年度、約1万1500件に上り、過去最多となったと発表した。主な相談内容としては、健康食品などを送りつけて代金を請求する商法のほか、家のリフォームやインターネットに関する契約トラブルが増えているという。

 高齢化社会に突入している今、誰もがこうしたトラブルに巻き込まれる危険があり、本人はもちろん、周囲の人も極力トラブルを回避するように留意しなければならない。

 そこで今回、筆者の体験を基に、トラブルから高齢者を守るために気をつけるべき点を探ってみたい。

非人道的対応の特養も

 認知症高齢者が特別養護老人ホームに入所、または介護を受けるためには、まず要介護認定を受ける必要がある。筆者の祖父母は共に5級で、日常会話を交わすことは難しい状態だった。

 ある時、老人ホームへ入所したが、数日もたたないうちに街中を徘徊しているところを警察に保護された。1カ月後にも再び徘徊しているところを保護されたため退所を申し出たが、施設側から「監視を強めるから大丈夫」などと説得され、入所を継続させた。

 ところが後日、見舞いのために施設を訪問したところ、祖父と祖母が動けないようにベッドにロープで縛り付けられている姿を目撃した。施設としても限られた人数のスタッフで徘徊を防ぐために致し方なく行っていることは理解できるものの、非人道的な扱いをされていると感じたため、自宅で介護することにした。とはいえ、家族だけで介護することは困難なため、ホームヘルパーの派遣を要請した。

 連日、気温が35度を超えていた真夏、祖父母に近寄ると悪臭が漂ってきた。明らかにしばらく風呂に入っていない体臭であり、ホームヘルパーに確認したところ、何日も入浴させていないことを認めた。派遣契約には、1日1回入浴させることが明記されており、契約違反であるため、ヘルパー派遣会社に連絡した。会社側は平身低頭の姿勢で、ヘルパーを交代させること、および再発防止することを約束したため、派遣契約は続行することにした。

 しかし、ある日、驚く光景を目にすることになった。祖父は郵政省を定年退職した際に、金無垢の置き時計とオメガの金時計を贈呈品としてもらい、大切にしまってあったが、それが無くなっていた。ほかにも、希少価値の高い切手として知られる「月に雁」「見返り美人」や、限定記念切手、古銭、古貨幣、般若・おかめのお面など、祖父が趣味で収集していた多くのコレクションがすべて見当たらず、金庫の中に入れていた現金や有価証券も消えていた。

 ヘルパー派遣会社に問い合わせたところ、祖父母から「是非受け取ってほしい」と申し出があったため受領したという。警察にも相談したが、VTRで窃盗の証拠があれば捜査するとの回答で、介入には消極的な姿勢だった。

 ヘルパーに不審感を抱き、祖父母は社会福祉施設に入所させ、そこで最期まで面倒を見てもらった。

注意すべき点

 祖父母と同居していた筆者の両親と、ヘルパーについて怪しい兆候がなかったか改めて確認したところ、いくつか不審に思える点があったので、現在ヘルパーを利用している人や、今後の利用を検討している人の参考までに列挙してみたい。

(1)特に頼んでもいないのに、押し入れなどの掃除をしたがる
(2)掃除中には部屋に入らないように念を押す
(3)新興宗教団体のパンフレットやDVDなどが置いてある

 実は、筆者が警察に連絡をした一番の理由は、祖父母の持ち物が無くなったからではない。ヘルパーが来てくれなければ、介護の負担は筆者の両親に大きくのしかかることになるため、ギリギリまで警察への届け出はためらっていた。しかし、新興宗教団体のパンフレットやDVDが置いてあるのを見て、届け出を決断したのだ。パンフレットには入会申込書のほか、すべての資産をお布施として提供する旨が書かれた誓約書なども挟んであった。印鑑証明書や実印は当方で管理していたため、大きな資産が没収されるような被害に遭うことは防げたのだと思う。

 以上を踏まえると、リスク対策としては次の6つを徹底することが重要になってくる。
(1)被介護者の部屋へは、頻繁に様子を見に行く
(2)被介護者の部屋には貴重品は置かない
(3)ハンコは近親者が管理する
(4)できればヘルパーにはローテーションで来てもらい、担当を固定化させない
(5)VTRモニターを設置するなど、監視体制を構築する
(6)派遣会社との契約書において、ヘルパーが問題を起こした場合の保証を明記する

 なお、高齢化社会においてヘルパーのニーズは高まっており、もちろん多くのヘルパーは真摯に仕事に取り組んでいると思われる。一部の心無いヘルパーのために業界全体の信頼が失墜することはあってはならない。高齢者と密室で過ごすことも多いヘルパーに対しては、単に試験を通れば資格を与えるという制度ではなく、モラル教育などの施策を整備することも重要になると考える。法整備を含めた抜本的対策を期待したい。
(文=尾藤克之/経営コンサルタント)

尾藤克之/経営コンサルタント

尾藤克之/経営コンサルタント

東京都出身。経営コンサルタント。代議士秘書、大手コンサルティング会社、IT系上場企業等の役員を経て現職。人間の内面にフォーカスしたEQメソッド導入に定評。リスクマネジメント協会「正会員認定資格HCRM」、ツヴァイ「結婚EQ診断」監修等の実績。著書に『ドロのかぶり方』(マイナビ新書)、『キーパーソンを味方につける技術』(ダイヤモンド社)など多数。

Twitter:@k_bito

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