米軍普天間飛行場(沖縄・宜野湾市)の名護市辺野古への県内移設に反対する沖縄県の翁長雄志知事が、政府に対する主張をまとめた書籍を近く発売するという話がささやかれている。
沖縄在住のフリージャーナリストによると「角川グループホールディングス(GHD)の出版社から聞いた話では、執筆の進み具合にもよりますが、年末までに間に合わせたい様子」だという。
「この話は知事のブレーンからも耳打ちされましたが、本の中身については発売直前まで極秘事項だそうです。本を出すという話だけを我々に知らせるのは、もしかすると政府とのやり取りで表に出ていない情報を暴露することもできると、暗に伝えたいからなのかもしれない」(同)
翁長知事は7月4日、東京都内のホテルで菅義偉官房長官と会談。ここでは自民党若手議員の勉強会で出た沖縄への侮辱的な発言についての謝罪というのが大義名分だったが、対立を避けて対話継続の方向性が再確認された。
「翁長知事は来年度予算の概算要求をにらんでいますが、問題は県内の基地問題に絡む各勢力がトーンを強めていること。県庁周辺でもデモが増えていて、中には中国人が大量に土地を買って属国化しているというガセネタまでバラまかれています。これらに背を向けて勝手なことはできませんが、かといってちょっとした動きで各所が大騒ぎするので、意向をまとめて県民に伝えたい狙いもあるようです」(同)
背後に中国の圧力?
ただ、基地問題がこじれた場合は、本の内容も過激なものになると同ジャーナリストは予想する。
「政府とアメリカの極秘会談の内容や、一部で沖縄県全体を経済特区にして独立採算の運営にしたいという提案が出たことなど、物議を醸す内容が本の中で明らかにされれば、困るのは政府だと思います」(同)
翁長知事サイドの後援者からは、来年の参議院選挙が行われる7月を反発の最大のピークにしたいという話も聞かれる。それまでの政府との綱引きの中で、翁長知事から「安倍首相と中央政府に物申す」といった書籍が出れば、かなりの注目を集めることになりそうだ。
「ただし、事はそう単純ではなく、中国を後ろ盾にした対米姿勢を明確化する狙いもあるのです」(同)
中国東方航空は7月から那覇-福州間の定期便を初めて就航。今後は那覇-杭州線の新規就航と就航中の那覇-上海線の増便も決まっている。これは4月に翁長知事が北京を訪問し、中国共産党ナンバー2の李克強首相に路線開設を取り付けた結果だった。
「中国は自国民の観光先の国をコントロールしようとしますから、定期便就航の見返りとしてアメリカへ抵抗することを要求していることでしょう。こういう背景も著書からくみ取れるかもしれません」(同)
ただ、発刊元と噂される角川学芸出版の社員は「角川GHDは、2013年に子会社を9社も吸収合併し、編集者が多いので断言はできませんが、少なくとも私は翁長知事の著作が動いているという話は知りません」と否定。実際に本が出るのかはわからないが、翁長知事は7月13日、県外からの土砂の搬入を規制する条例を成立させ、埋め立てに抵抗。安倍政権の本格着工に待ったをかけた。その主張や内幕が一冊にまとまるのなら、ぜひ手に取ってみたい。
(文=ハイセーヤスダ)