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三菱自動車は本当にピンチなのか? 日産へのOEMに活路

三菱自動車が過去最高益でも笑えないワケ リコール続出に国内販売も不振

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問題山積み。(「三菱自動車 HP」より)
 円安の追い風に乗り3月期決算で最高益を更新したのに、三菱自動車の益子修社長の表情はなぜかさえなかった。

 10年ぶりに過去最高益となった2013年3月期連結決算の売上高は前年同期比0.4%増の1兆8151億円、営業利益は同5.8%増の673億円、純利益は同58.7%増の379億円。純利益は2月時点の予想の2.9倍に急増した。為替差益が増えたためだ。

 益子社長の表情が硬かったのは、最高益の更新を乾杯できる状況にはなかったからだ。決算発表の前日の4月24日、プラグインハイブリッド車(PHV)「アウトランダーPHEV」のリチウムイオン電池が発熱し、バッテリーの一部が溶けた問題の調査結果を発表した。アウトランダーPHEVは3月に神奈川県の系列販売会社でフル充電して動かそうとしたところ、異臭がしてリチウムイオン電池を含むバッテリーの一部が溶けた。ほかにも東京都内や岐阜県内で電気系統のトラブルが確認された。

 作業を再現して調査したところ、製品を検査する機械に作業員が電池をセットする際に誤って落とし、その衝撃で「電池内部が変形し、トラブルが起きた可能性が高い」ことが判明した。

 リチウムイオン電池はニッケル水素電池よりエネルギー密度が高く軽いことから、多くの電気自動車(EV)に搭載されている。半面、構造が複雑で取り扱いが難しい。これまでにも不具合が報告されている。三菱自動車は、このような人為的ミスを起こさないように生産方法を改める。

 電池の発火などの不具合が見つかった3車種のリコール(回収・無償修理)を国土交通省に届け出る方針とのこと(毎日新聞4月25日付。この後、6月4日にリコールの届け出をした)。「アウトランダーPHEV」4305台、電気自動車(EV)「アイミーブ」「ミニキャブミーブ」115台の計4420台。電池はGSユアサ系のリチウムジャパン製で、衝撃が加わった電池に充電すると発熱することが確認されたという。

 三菱自動車は09年に電気自動車アイミーブを販売し、エコカー時代の先陣を切ったが、走行距離の短さなどから販売はいまだに上向かない。09年11月から13年3月までのアイミーブの国内販売台数は8047台にとどまる。

 アイミーブの苦境を救う切り札として1月に投入したのが、SUV(スポーツ多目的車)アウトランダーをベースにした同社初のプラグインハイブリッド車「アウトランダーPHEV」。家庭でも充電できる次世代車で、ガソリン1リットル当たり61キロ以上走る燃費の良さが売りだ。大型化と航続距離が延びたことから、発売から2カ月間で販売計画の2倍の約8000台を受注する人気車種となった。7月からは欧州を皮切りに海外市場へ投入する予定だった。

 ところがリチウムイオン電池の不具合が発覚。生産、出荷だけでなく、店頭での販売を中止した。これにリコールが追い討ちをかけた。戦略車が出だしからつまずいたわけで、イメージダウンは避けられない。

 相次ぐリコールでブランドの信頼を失った三菱車は、販売不振が続く。11年に発表した中期経営計画で世界販売台数を11年3月期の98万台から、3年後の14年3月期には137万台に引き上げる目標を掲げた。だが、13年3月期の販売実績は98.7万台。11年とほぼ横ばい。しかも販売の86%は海外で、国内では大苦戦だ。12年8月に満を持して投入した排気量1000ccのコンパクトカー「ミラージュ」も期待外れに終わった。

 業界全体の12年度(12年4月~13年3月)の国内の新車発売台数は、前年度比9.6%増の521万台と2年連続で増加した。しかし三菱自動車は13.4万台で前年度より11%、1.7万台も減った。国内の販売シェアは2.6%と3年連続で減少し、最下位に沈んだ。

 中期経営計画の最終年度に当たる14年3月期の世界新車販売台数を、前年同期比18%増の116.9万台に下方修正した。当初の中期目標の137万台には遠く及ばないが、東南アジア市場に新型セダンを投入し、目標台数を目指す。

 日産自動車と折半出資で設立したNMKVで開発された新型の軽自動車「eKワゴン」「eKカスタム」を6月に発売。軽自動車の販売比率は13年3月期に54.2%(2台に1台強)だったが、「eKワゴン」の投入でこれを大きく上回り、軽自動車メーカーに転進する。

 日産は同じ車を「DAYZ(デイズ)」として売り出す。販売目標は10万台(三菱側のeKは5万台)だ。日産が企画・開発に携わった、初めての軽自動車。デザインに特徴があり「軽を超えた上質感」を日産はアピールする。

 三菱自動車は国内生産も厳しい状況が続いている。円高による輸出の台数減もあって、13年3月期の国内生産は前期比17%減の48.6万台となった。軽自動車を生産する水島製作所(岡山県)は稼働率が4割を切る水準まで低迷しており、14年1月から製造ラインを4本から2本に集約する。

BusinessJournal編集部

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