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パナソニック、プラズマ工場全面閉鎖へ〜個人向け事業撤退加速で“津賀改革”総仕上げ

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パナソニック本社(「wikipedia」より/Pokarin)
 パナソニックは13年度末を目処に、プラズマテレビ工場を全面閉鎖する方針を固めた。明日10月31日の中間発表の席上で、津賀社長が説明する予定だ。

 今回の閉鎖決定に至るまでの経緯については、2011年の話まで時をさかのぼることとなる。

「戦艦大和だ」–。同年春、兵庫県尼崎市にあるパナソニックのプラズマパネル工場を視察した当時の津賀一宏・同社専務(現社長)は、こう呟いた。テレビ事業を統括していた津賀専務は、この工場を「戦艦大和」、つまり「役に立たない巨額投資」と評価したのだ。

 広大な敷地にそびえ立つ最新鋭の3つの工場は、同社が10年かけて進めてきたプラズマ拡大路線の象徴である。総投資額は6000億円に及び、10年に稼動した尼崎第3工場には2100億円が投じられた。

 11年7月の役員会で津賀専務は、「尼崎第3工場を止めるべきだ」と爆弾発言をした。中村邦夫会長-大坪文雄社長が推進してきたプラズマ路線に、公然と異議を唱えたわけだ。役員会は紛糾した。しかし、3カ月後、同社は尼崎第3工場の停止を発表した。稼動してわずか1年半後のことだ。現在、尼崎にある3つの工場のうち、稼動しているのは第2工場だけとなった。

 同社は12年3月期に7721億円という巨額赤字を計上、続く13年同期にも7542億円の赤字を計上した。これらの赤字の主な原因は、プラズマテレビ事業にあった。「プラズマからの撤退なくして、パナソニックの再生なし」。かなり前から撤退が取り沙汰されていたが、完全撤退を決断できないでいた。

 津賀専務が尼崎工場の生産停止を求めたのは、11年7月のことだ。社長に就いたのは12年6月。工場の閉鎖を決定するまで、さらに1年4カ月の時間を要したことになる。撤退を決断できないパナソニックの企業体質が浮き彫りになった。

 社長に就任した津賀社長は、テレビ事業について「売り上げは立っても利益は出ない。(もはや)コア事業ではない」と断言していた。この時点で撤退を決断しなかったのは、「テレビとディスプレイを分けて考える必要がある」(津賀社長)と考え、法人向けディスプレイの需要開拓という挽回策に期待をかけたからだ。

 家庭用と業務用のディスプレイをはっきり区別し、収益性の高いディスプレイ分野の事業を拡大して、トータルとしてのプラズマ事業を黒字にすることを考えたのだが、法人向けは伸びなかった。今年度に入って状況はさらに悪化し、追い込まれた末の完全撤退となったわけだ。

●法人向けビジネスへの舵切り

 津賀社長は「BtoB」「脱家電」を打ち出し、値崩れがしにくい法人向けビジネスに舵を切った。

 電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド(PHV)向けの充電器はその1つだ。これまで充電器を個人住宅向けに売り込んできたが、自動車ディーラーやカー用品の全国チェーンなど法人向けの市場の開拓に乗り出した。

 その一環として、9月20日、岐阜県各務原市にオートバックス各務原店がオープンし、その駐車場にパナソニック製の充電器が設置された。オートバックスは13年度内に100店舗に充電器を設置するが、各務原店はその1号店。すべてパナソニック製が納入される。

 政府はEVやPHV向けの充電設備の整備のために、14年10月を期限に1005億円の補助金を計上した。最大3分の2を補助する制度だ。充電時間が30分と短い急速充電器は4000カ所、充電に数時間かかる普通充電器は8000カ所に設置箇所を増やす。政府の補助金を追い風にパナソニックは、13年度の充電器の設置台数、1000台の目標を掲げる。カーナビなどの納入先である自動車ディーラーやカー用品チェーン、車検業者に営業攻勢をかける。

●加速する個人向け事業撤退

 一方で、個人向け事業は急ピッチで売却を進める。12年3月に子会社の三洋電機が日本や東南アジアの洗濯機・冷蔵庫の事業を中国の海爾(ハイアール)グループに売却した。今年8月には、中国で白物家電を生産販売する三洋の合弁会社の全保有株を、米家電大手・ワールプールに売却する契約を結んだ。加えて、今年3月、三洋のデジタルカメラ部門を投資会社のアドバンテッジパートナーズに売却した。

 個人向けスマートフォン(スマホ)事業からも13年度中に撤退し、携帯電話基地局事業も売却する方針だ。今年度中に唯一の自社の拠点、マレーシア工場でのスマホ生産を終了し、今後は企業向けにシフトする。

 9月には血糖値センサーなどを手掛けるヘルスケア子会社を、米投資ファンドのコールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)に1650億円で売却することで合意した。

 家電など自社製品の競争力を高めるための中核事業と位置付けてきた半導体事業は、1万4000人いる従業員を14年度までに7000人に半減させる。一部工場の売却交渉を海外企業と進める。デジタル家電に組み込むシステムLSI事業は、今年2月に富士通と統合することで合意したが、まだ具体的な話は進んでいない。

 パナソニックは、すべて自前で事業を拡大させる経営手法を見直し、遊休資産や非中核事業の売却を急いでいる。プラズマテレビからの完全撤退は津賀社長が推し進める「構造改革」の仕上げを意味する。今後は、車載電池やカーナビ、充電器などの自動車関連とリフォーム用の建材や機器を扱う住宅関連事業を柱に据える。19年3月期の自動車関連、住宅関連の売り上げを、それぞれ2兆円に伸ばす計画だ。

 社内やグループ企業からは「社名を松下電器からパナソニックに変えたことで運気が落ちた」との声も上がる中、“新生パナソニック”へ向け本格的に動き始めたかに見える“津賀改革”の行方に、注目が集まっている。
(文=編集部)

BusinessJournal編集部

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