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日本政策金融公庫の呆れた融資の実態 審査能力なし、事業内容には無関心?

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 2回目の面談は、それから10日ほど後だった。売上台帳や借入金の残高、家賃領収書などの確認で、10分もするとそろそろ面談終了の気配が漂ってきた。Yさんが気にかかったのは、この事業の経験はないのですね、という担当者のつぶやきだった。そういう印象を持たれるのは困るので、このときばかりはYさんも必死で現在の仕事と新事業の関連性を強調して抗弁したが、担当者は自分の感想をいうと、それ以上の興味はなさそうで淡々と聞き流した。こうして一抹の不安を残したまま面談は終わった。

●将来性とは関係のない融資

 ところが、10日ほどたって融資決定の連絡が入った。Yさんは狐につままれたような思いだった。前出のコンサルタント・N氏は今回のケースについて、次のように説明する。

「身元はしっかりしているようだし、現状確認で問題にするようなことがなかったというだけの話です。新規事業の可能性や将来性とは関係のない融資です。公庫の担当者が気にするのは、融資を受ける側のウソです。申請書のウソ、面談時のウソがあれば100%NGが出ます。ウソをつかず、小さな約束をきっちり守ってもらえば、公庫としては文句はないのです」

 きちんと返済してもらえるなら(小さな約束)、事業の成功(大きな約束)などは期待していないというのが、Nさんの経験値に基づく分析だ。公庫担当者に新規事業の可否を判断しろというのは酷な話で、新規事業への融資だろうが、年末のつなぎ資金であろうが、救済資金であろうが、現場の融資担当者には関係のないことだという。

 公庫がこうした硬直した融資姿勢をかたくなに守っているのは、長い不況のせいで、巧妙に練られた事業計画や決算データにもとづき融資を受けたあげく、実際にはまったく違う使途に用立てる申し込み者がいたり、そのせいで貸し倒れも多いという事情が大きいという。

 さらに問題なのは、「公庫職員は新規事業への審査能力について、専門的な指導、訓練は受けていない」(N氏)という点だ。とりわけ景気の牽引役と目されるIT(情報技術)、通信などの先端分野はお手上げだ。「アプリ」や「SNS」などの常識語句も、融資現場の辞書には載っていないとN氏は嘆く。

 これが民間の金融機関の話であれば、うなずけないことではない。そこそこの警戒心は手堅い、安全第一の銀行マンのカガミといえるだろう。だが、これは政府のデフレ脱出、不況突破の日本経済再生という経済運営を底支えする金融機関の話だ。1月に閣議決定された「日本経済再生に向けた緊急経済対策」では、ビジネスへのチャレンジの支援として、起業・創業や第2創業を目指す、特に女性や若者への支援、ベンチャー創出などを大きく謳っている。これらの政策を実現するには、事業を起こし、必要なお金の工面をする公庫の役割がきわめて大きい。公庫は政府、国民の危機感を受け止め、融資審査の優先順位を、事業本位、経営者の熱意本位、それらで裏付けられた将来性本位にシフトすべきではないだろうか。
(文=岩崎寿次/ビジネスコラムニスト)

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