ソニー本社(「Wikipedia」より/Shuichi Aizawa)
ソニーがパソコンに参入したのは1996年。ピーク時には年間870万台を出荷したが、2013年度(13年4月~14年3月)は580万台と34%減る見込み。世界シェアはわずか1.9%で9位で、単独では営業赤字とみられている。
日本産業パートナーズがパソコン事業の受け皿会社を設立して、「VAIO」ブランドの販売を継続する。パソコン事業の従業員1100人のうちの250~300人と経営陣は、新会社に転籍する。売却額は400~500億円とみられており、ソニーはパソコン事業の売却やリストラなどの構造改革の費用を積み増し、14年3月期の連結最終損益(米国会計基準)は 1100億円の赤字に転落する。9月中間決算時点で最終損益を下方修正して300億円の黒字(13年3月期比30%減)としたが、2年ぶりに赤字へ転落することになる。
日本産業パートナーズは、みずほ銀行系の投資ファンド。事業再生ファンドだから、長期間にわたり、自ら事業を行うわけではない。業績を好転させた上で転売し、売却益を稼ぐのが目的だ。日本産業パートナーズは、NECの子会社でポータルサイトを運営するNECビッグローブを700億円で3月末までに買収することでNECと合意したばかり。ビッグローブに関しては、富士通系のニフティに転売するのではないかといわれている。また、早くも「VAIO」の将来の売却先として中国のレノボ・グループが最有力候補として浮上している。
●テレビ事業分社化でも広がる失望
1990年代後半以降、ソニーの人員削減数は出井伸之氏、ハワード・ストリンガー氏の両CEO時代から累積で7万人以上に達している。14年度末までに、さらに5000人の削減を行う。
パソコン事業の売却やテレビの分社化は13年12月にCSO(戦略担当執行役)に抜擢された吉田憲一郎氏が担当した。吉田氏はソニーのネット子会社、ソネットの社長だった。今後、平井一夫CEO、吉田憲一郎CSOの主導でエレクトロニクス事業売却の総仕上げに突入するが、テレビ事業の分社化については中途半端との批判も多い。ソニーは7月をメドにテレビ事業を分社化するが、平井氏は「会社は分けるが、経営は『ワン・ソニー』の精神でやっていく。テレビ事業を売る気はない」としているためである。
ソニーのテレビ事業の14年3月期は250億円の赤字予想であり、10年間にわたり営業赤字が続いたことになる。平井氏は「15年3月期のエレクトロニクス事業の黒字化を目指したい」と宣言しているが、外資系証券アナリストは「現時点ではエレクトロニクス事業の来期黒字化は難しい」と疑問視している。
そうした疑問の声が上がる背景には、もともと平井氏は14年3月期のエレクトロニクス事業黒字化を必達目標(コミットメント)として掲げていたことがある。この目標未達が明らかになるや、平井氏は「いろいろな見方があると思うが、エレクトロニクス事業を再生し、エンターテインメントと金融事業をさらに大きくしてソニー全体の成長に寄与することが私の使命だ」と語り、こうした姿勢が市場で失望を呼んでいるともいわれている。
2012年以降、リストラを進めてきたソニーは、13年3月に時価総額でパナソニックを逆転した。だが、パナソニックはプラズマテレビから完全撤退すると発表し、株価が上昇。8月以降、ソニーはパナソニックに株価で大きく水をあけられ、その差は現在では時価総額で1兆2000億円近くまで開いている。自動車と住宅を両輪にするパナソニックに比べて、ソニーは「次の柱になる商品が見えてこない」(国内投資顧問会社幹部)。