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中沢光昭「路地裏の経営雑学」(11月17日)

なぜ日本人は“異常に”お金を使わない?ひたすら貯蓄するワケ データと感情面より考察

文=中沢光昭/経営コンサルタント
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 健康とお金について、別の視点からも見てみましょう。生命保険文化センターの「生命保険に関する全国実態調査」(09年時点)によると、日本の生命保険の世帯加入率は90.3%であり、アメリカの78%、イギリスの40%など他の先進国と比較すると格段に高い率を誇っています。生命保険に払う保険料は平均で年45.4万円にも上り、所得の8%を占め、「お金をふんだんにかけて、もしもの時に備える」という、お金が必要なのかそうではないのかよくわからない構図です。もっとも、著者も保険に入っていますので、保険の仕組みを否定しているわけではありません。

 保険については損害保険、特に地震保険にも特徴が表れています。損害保険料率算出機構のデータによれば、地震保険の加入率は1994年度は9.0%でしたが、年々増加を続け、13年度には27.9%にまで増加しています。11年の東日本震災の影響ももちろんありますが、震災が起こる前から着実に増加を続けてきています。震災前の08、09、10年度は22.4%、23.0%、23.7%と推移し、震災後の11、12、13年度は26.0%、27.1%、27.9%です。震災により非連続的に2.3%ほど増加していますが、それ以前から毎年0.3~1%程度増え続けています。現在、地震保険単独では加入できず、火災保険のオプションとして加入しますので、保険料は決して安くはありません。大震災が起きて、なおかつ自宅が被害を受ける可能性は相当小さいはずですが、万が一に備えるために毎年一定額を払い続けようとする日本人の傾向がうかがえます。

 高齢者がお金を必要と思う理由については、「不安」だけではないとするデータもあります。少し前ですが、12年9月21日付日本経済新聞によると、2000万人いる20~34歳の人口のうち半数近くが未婚で、かつ親と同居しています。1980年時点では30%以下でした。その層の完全失業率は世代平均を3%上回り10%強です。この世代の子供を抱える高齢者にとっては、単純に毎日を過ごすお金が必要となるだけでなく、もしも自分が亡くなった後に残される我が子の将来を思うと、より多く資産を残しておこうと思うのは人間として当然のことなのかもしれません。

 以上みてきたデータから、いざという時を見据えてきちんと備える国民性がうかがえますが、実は過去に、日本には人々が大らかにお金を使っていた時代がありました。次回は、その時代をヒントに、どうすればお金を循環させることができるのかを考えていきます。
(文=中沢光昭/経営コンサルタント)

中沢光昭/株式会社リヴァイタライゼーション代表

中沢光昭/株式会社リヴァイタライゼーション代表

企業再生コンサルタント兼プロ経営者。
東京大学大学院工学研究科を修了後、経営コンサルティング会社、投資ファンドで落下傘経営者としての企業再生に従事したのち、上場企業子会社代表を経て独立。雇われ経営者としてのべ15期以上全うし、業績を悪化させたのは1期のみ。
事業承継問題を抱えた事業会社を譲受け保有しつつ、企業再生とM&Aをメインとしたコンサルティングおよび課題内容・必要に応じて半常勤による直接運営・雇われ経営者も行う。シードステージのベンチャー企業への出資も行う。
株式会社リヴァイタライゼーション 代表・中沢光昭のプロフィール

Twitter:@mitsu_nakazawa

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