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高井尚之が読み解く“人気商品”の舞台裏

Jリーグ、サラリーマン指導者が名GMに 予算、チーム事情…現実に向き合い的確な運営

文=高井尚之/経済ジャーナリスト・経営コンサルタント

欧州留学で学んだ、理想のサッカーと現実の戦い

 そんな佐久間氏が指導方法として目を開かされたのは、32歳の95年に社命で留学した欧州でのことだ。時系列的に前後するが、当時のNTT関東は日本フットボールリーグ(JFL=Jリーグの下位リーグ)でも下位に低迷するチームだった。そこで同氏は「チーム強化につながる理想のサッカー」を追い求めて、まずは日本サッカー界が影響を受けてきたドイツに渡ったが答えは見つからず、悶々とした気持ちのままオランダに向かい、そこでようやく見つけることができた。

 それは「ダッチビジョン」という理論だった。オランダ代表監督として74年ワールドカップ準優勝、88年欧州選手権優勝を果たした名監督であるリヌス・ミケルス氏がまとめた同国の指導育成プログラムである。当時のアヤックス・アムステルダム監督だったルイ・ファン・ハール氏(現マンチェスター・ユナイテッド監督)からも身近に学んだという。

 少し専門的になるが、ダッチビジョンとは「楽しませる:Enjoyment」「繰り返し練習させる:Repetition」「よい指導をする:The quality of coaching」が基本で、練習方法も「少人数での練習から始めて多人数での練習へ移行」「試合のある部分を切り取って練習する」など、実践的な指導方法だ。今では高校サッカーチームも取り入れる理論だが、20年前の日本サッカー界には新鮮だった。

 オランダで学んだ攻撃的サッカーを理想に、大宮アルディージャやVF甲府の監督やフロント幹部としてチーム整備を進めてきた佐久間氏だが、予算面の制約やチーム事情といった現実と向き合う意識は高い。

「それはサッカー先進国では常識です。現在のVF甲府における戦術でいえば、理想=攻撃的にパスを運ぶサッカー、現実=守備を固めて逆襲速攻といえます」(佐久間氏)

 かつて、J1に昇格した直後の大宮アルディージャ時代には、J2に再降格しないためのデータ分析をした。そこで得た結論は「昇格後2年以内に再降格した大半のチームは守備崩壊が原因」というものだ。これは現在でも変わらず、例えば昨季J1に昇格した徳島ヴォルティスはリーグ戦34試合で得点16、失点74という結果で、早々とJ2落ちが決まってしまった。

 だからこそVF甲府は「昨季の総失点数がリーグ2位タイの守備力を継続した上で、ボール奪取力を高めて攻撃し、1試合平均の得点数を昨季の0.9点から1.3点に高めたい」(佐久間氏)という現実路線で今季のJ1に挑む。

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