ビジネスパーソン向け人気連載|ビジネスジャーナル/Business Journal
シャープ幕張ビル(「Wikipedia」より/掬茶)
こうした中で違和感を抱かざるを得なかったのが、メインバンク2行と官民ファンドの動きだ。本来ならば資金の引き上げに動いても不思議はない状況にもかかわらず、そろって大胆な金融支援に応じたのだ。
国民経済的にみて、雇用確保は最重要課題のひとつ。とはいえ、事実上の破綻に瀕した企業への今回の救済劇は、市場の需給調整機能を損なう行為にほかならず、両行やファンドの見識が問われている。
赤字常態化のシャープ
シャープの最終赤字決算は常態化しており、過去4年間で3回目となる。今回は12年3月期(最終赤字3761億円)、13年3月期(同5453億円)に続くケースだ。14年3月期(最終黒字116億円)に一息ついたものの、今回再び巨額赤字に沈んだ格好となっている。
15年3月期の売上高は前期比で4.8%減の2兆7863億円にとどまった。主力製品の中で販売不振が目立ったのは、金額で前期比10.6%減、台数で同10.0%減になった液晶テレビだ。また、分野別では売り上げ全体の3分の1を占める液晶部門が、単価下落の影響を受けて前期比8.5%減の9071億円に減った。中国勢などとの競争にさらされている太陽光パネルも不調で、エネルギーソリューション部門が同38.3%減の2708億円に落ち込んだ。
営業損益、経常損益、最終損益はそろって481億円、965億円、2223億円の赤字に転落。営業損益赤字転落の原因になったのは、587億円に達した「買付契約評価引当金」の計上だ。太陽光パネルの製品市場では競争の激化によって販売価格が下がっているにもかかわらず、シャープは長期契約に基づいて材料(ポリシリコン)を高値で購入し続けざるを得ないため、将来の損失の発生が確実という。そこで、監査法人の助言もあり、想定される損失を計上したというものだ。同様に、液晶部門の在庫の評価減(295億円)を計上したため、営業赤字が一段と膨らんだという。
さらに、海外液晶テレビ構造改革(99億円)、太陽光パネル堺工場減損(92億円)、液晶亀山・三重工場減損(777億円)、電子デバイス三原・福山工場減損(66億円)などの決算処理を行っており、これが最終赤字を大きく膨らませる原因になったとしている。