東芝は4月3日、14年3月期のインフラ関連工事の会計処理に問題があったとして、室町正志会長をトップにした特別調査委員会の設置を発表している。特別調査委の調査が進む中で、原価の見積もりの過小評価以外にも、調査が必要な事案が出てきた。不適切な会計処理が14年3月期より前の期にも行われていた可能性が明らかになった。
不適切な会計処理が行われたのは、コミュニティ・ソリューション、電力システム、社会インフラシステムの社内カンパニー3社とその関連会社だという。508億円の最終利益を上げた14年3月期連結決算については、「少なくとも修正の必要がある」と説明している。不適切な会計処理がいつから、誰の指示で行われていたかなどは究明されていない。「売り上げや利益がドレッシング(化粧)され、水増しされていた可能性が極めて高い」(市場筋)のだ。
東芝の内紛
東芝の不適切な会計問題の背景には、深刻な内紛が横たわっている。同社は西田厚聰会長が内規で定められた会長定年である70歳に達したため、14年6月25日付で相談役に退いた。だが、9年間にわたり同社のトップに君臨してきた最高実力者の引退で「西田時代」は終焉したかというと、そうではなかった。
物議を醸したのは後任の会長人事だった。後任会長には室町正志取締役が昇格し、その一方で佐々木則夫副会長は留任。社長経験がない室町氏が、佐々木氏を飛び越えるかたちで会長に就いた格好となり、異例人事として当時話題になった。室町氏は西田氏同様、取締役会議長と取締役候補などを決める指名委員会委員を兼任した。この室町氏がトップとなり、一連の不適切会計問題の特別調査委がつくられた。
西田氏と佐々木氏の確執が公になったのは13年春、当時会長だった西田氏は、社長の佐々木氏を新設した副会長に棚上げし、新社長に田中久雄副社長を昇格させた。13年2月26日の社長交代会見は異様だった。西田氏は社長の条件として「さまざまな事業部門を経験していることとグローバルな経験を持っている」ことを挙げ、「一つの事業しかやってこなかった人が東芝全体を見られるのか」と発言。原子力畑一筋で海外経験が少ない佐々木氏を公然と批判した。すかさず佐々木氏は、「業績を回復し、成長軌道に乗せる役割は果した。ちゃんと数字を出しており文句を言われる筋合いはない」と真っ向から反論。公の場で会長と社長がお互いを批判し合うという異例事態となった。