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本業が稼げない…“非鉄道会社化”する鉄道会社?家事代行、健康相談等で生き残り模索

文=小川裕夫/フリーランスライター
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「買い物弱者」救済にも乗り出す京王

 公共交通というインフラを担う鉄道会社は、地方自治体にとって街づくりに欠かせないパートナーだったが、最近はさらに鉄道会社が果たす役割が大きくなっている。

 中でも特筆すべきは、京王が経済産業省とタッグを組んで進めている買い物支援事業だ。

 今般、食料品や生活雑貨を販売する個人商店は減少の一途をたどっている。日々の生活を支えるのは大型のスーパーマーケットで、それらの多くは郊外に立地している。自動車を運転できない高齢者層は、郊外型スーパーに足を運びにくい。また、小さな子供を抱える若い母親なども、郊外の商業施設は頻繁に行きづらい。

 経産省は、「買い物弱者」を「生鮮食品店への直線距離が500メートル以上離れていること」「自動車がない」「65歳以上」と定義しており、経産省と共同で対策に当たっている農林水産政策研究所の試算では、その数は全国で382万人だという。また、25年には598万人まで増加すると推計されている。

 生鮮食品をはじめ、日々の買い物が不便なエリアに住んでいると、日常生活に支障を来す。そうしたエリアは、「フードデザート(食の砂漠)」と呼ばれ、前述した買い物弱者と共に社会問題化している。京王は、そうした問題の解消にも動き出している。

 独自に買い物代行や宅配サービスを行ってきた京王は、13年から移動販売車による買い物支援を始めており、さらに今年から同事業を深化させた施策を始めた。

「『暮らしの保健室』と銘打って試験的に始めた健康相談事業は、多摩市と連携した事業です。移動販売車に保健師が同乗し、買い物に来た高齢者などの健康チェックを行っています」(同)

 この事業は、経産省の「地域自立型買い物弱者対策支援事業」の採択を受けて進められている。京王の取り組みは、とどまることを知らない。今年5月、空家等対策の推進に関する特別措置法が施行されたが、京王は空き家問題でも新しい事業に着手している。

「6月から始めた空き家巡回サービスは、所有者に代わって空き家を定期的に巡回するサービスです。この事業は、沿線の価値や魅力を維持するとともに、活気のある沿線づくりを目指したものです」(同)

 空き家対策は、行政にとって悩ましい課題のひとつだ。京王の空き家巡回サービスは、行政と連携した事業ではないようだが、これも沿線価値の維持や新しい魅力の創出につながることは想像に難くない。

 京王のみならず、鉄道で稼ぐことが難しくなった鉄道各社は、新事業を模索し始めている。それにより、鉄道会社は「人を運ぶ」会社から「人も運ぶ」会社に変貌しつつあるが、京王はそのトップランナーとして公共サービスの分野でも走り始めている。
(文=小川裕夫/フリーランスライター)

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