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ジリ貧の水産業、知られざる「やっかいな」問題 効率化&IT化「できなかった」事情

文=久我吉史/ライター
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・課題2:販売当日、どのくらいの魚が流通するか予測できない

「魚の流通は養殖より天然モノのほうが圧倒的に多く、天候などに左右されるため販売当日の朝にならないと流通量が決まらない。鮮魚店・小売店だと、入り口と出口で魚の形が異なる場合が多い」(同)

 入り口と出口で形が異なるというのは、例えば1尾で仕入れた魚が切り身やお寿司に加工されるという意味である。これも製造業の生産管理システムと同じような仕組みで、加工品に対して必要な魚を登録して管理すればよいのではないかと思うかもしれない。しかし、鮮魚店・小売店の扱える加工品の数は、製造業より圧倒的に少ない。一日に何万・何億という部品を扱うような製造業の工場に対して、鮮魚店・小売店が一店でまかなえる魚は、がんばっても数百程度。しかも当日朝まで入荷量が不明となれば、生産管理システムにデータを入力する時間がないのだ。

 また魚には、野菜のようなきちんとした規格が存在していない。スーパーマーケットのように大きな小売店では、できるだけ大きさを揃えることでグラム単位の販売をしている。一方、鮮魚店・小売店では1匹の魚ごとに商品をPOSシステムに登録して、バーコードを出力しているという。例えば、10匹のアジを売る場合、スーパーでは、「アジ」という商品を登録して「100g・200円」とシステム登録すればよいが、鮮魚店・小売店では、1匹ごとに、「アジA ・150円」「アジB・ 200円」という具合にシステム登録するイメージだ。システム開発の用語では、登録されていく商品のデータのことを「トランザクション」と呼ぶ。トランザクションには、できるだけまとめたかたちでデータベースに登録しなければならないセオリーがある。1匹ごとにシステム登録していくとなれば、データがまとめにくいのである。

ジリ貧の水産業、知られざる「やっかいな」問題 効率化&IT化「できなかった」事情の画像2鮮魚小売店「sakana bacca」の外観イメージ。一般の鮮魚店とかけ離れたスタイリッシュな外観で人目を引く

17年にプラットフォームが完成し、水産業界IT化を加速

 これらの課題を解決すべく開発されたのが、foodisonの水産プラットフォームである。すでに、sakana baccaでの販売に使うシステムでは、こうした課題を解決できる機能が実装されていて、1商品ごとにバーコード、商品名、金額が印刷されたラベルシールが、ワンタッチで印刷できるようになっている。「17年には、プラットフォームそのものが完成し、他社への提供を行う予定である」(代表取締役CEO・山本徹氏)と、単なる事業構想にとどまらない。2年後にはfoodisonのシステムによって水産業界の事務効率化が進み、情報がスムーズに流れるようになるのだ。魚ポチやsakana baccaで扱われている魚の情報が、より詳しく飲食店や消費者に伝わることになり、消費者からのフィードバックも受けられるようになる。個人のスマートフォンで、sakana Baccaに本日入荷した魚の種類や在庫、調理方法、水揚漁港などの情報がわかるアプリが同社で開発されるかもしれない。

 foodisonの取り組みは、水産業界の仕組みを破壊・再構築するものではない。水産業界のIT基盤として、漁協や市場、小売店と協力し、日本の水産市場の拡大に努めているのである。「現在は、プラットフォーム強化のためのエンジニアを募集中」(石井氏)とのことなので、日本の水産業界拡大に興味がある人は応募してみてもよいかもしれない。

 20年の東京オリンピックまでには、「日本の水産業界が盛り返した」というニュースを目にしていたいものだ。
(文=久我吉史/ライター)

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