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ムカつく相手への復讐代行業者の実態…痴漢仕掛けや中傷メールで辞職に追い込む…殺人も

文=杉村甚八
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ムカつく相手への復讐代行業者の実態…痴漢仕掛けや中傷メールで辞職に追い込む…殺人もの画像1「Thinkstock」より

 2014年、日本産業カウンセラー協会が実施する無料電話相談室「働く人の悩みホットライン」に寄せられた「職場の問題」に関する相談のなかで、突出していたのが「人間関係」だったという。

 確かに、上司によるパワーハラスメントや同僚からのいじめに苦しみ、離職を決意する人は少なくない。一方、「自分を追いつめた相手をやり込めたい」と、攻撃的な感情を募らせてしまう人もいる。そして、そういった人間関係の「ゆがみ」を利用するビジネスが「復讐代行業者」である。

 復讐代行業者とは、その名の通り「数十万~数百万円の報酬を支払えば、気に入らない相手に社会的な制裁を与えてくれる」という触れ込みの業者だ。しかし、人気時代劇の『必殺仕事人』(テレビ朝日系)ではあるまいし、そんな業者が現実に存在するのだろうか。

 実際、13年10月には、この手の業者が世に知られる事件が起きている。「復讐代行」と呼ばれる業者が、日本の犯罪史上で初めて逮捕されたのである。

 事件の発端は、広島県に住む29歳の女性が元同僚を恨むあまり、あるサイトで復讐を依頼したことだ。この復讐代行業者は、ターゲットが勤める会社に「前の会社で金銭を盗んだ」「社長や専務と愛人関係にある」などと嘘のメールを送り付け、30~40万円の報酬を受け取ったという。

 結局、この業者と依頼者は名誉毀損の疑いで逮捕されたが、数年たった今でも、復讐代行を名乗る業者は多く存在する。

いじめ現場を撮影、痴漢冤罪を仕組まれる可能性も

 こうした業者は、どういった方法で依頼者の復讐を実行するのだろうか。基本的に復讐代行を名乗る業者の多くは、ターゲットを精神的に追い詰める手段を多用する。

 広島の事件のように「誹謗中傷メールをばらまく」といったものから、「出前を勝手に注文する」「無言電話を何度もかける」など、さまざまな手段でターゲットを精神的に疲弊させ、辞職やうつに追い込むのだという。

 ある業者のサイトでは、「いじめの現場を撮影し、その写真を送り付ける」という手の込んだものから、「痴漢冤罪を仕掛ける」というものまで、多様な手口が紹介されている。また、にわかに信じがたい話だが、裏社会に詳しい放送作家によると「殺人なら、1人300万円で引き受ける業者もある」という。

 現実の苦しみに悩む人にしてみれば、「こういった業者も、いわゆる必要悪なのでは?」という思いもあるのかもしれない。しかし、それは大きな間違いだ。こうした業者の実態は、我々の想像以上にえげつないものなのである。

復讐代行業者の目的は詐欺行為?

 実は、復讐代行を名乗る業者の多くは詐欺目的だ。アンダーグラウンドビジネスに詳しいジャーナリストによると、「依頼人がお金を振り込んだ途端に『業者と連絡が取れなくなる』というケースがよくあります。依頼者は、事が明るみに出ても困るため、警察にも相談できずに泣き寝入りするケースが多い」という。

 実際、日本最大級の弁護士・法律ポータルサイト「弁護士ドットコム」には、「復讐代行」に関連する相談が2400件以上も寄せられている。被害者、つまり復讐を依頼した人は会社員だけでなく、夫の不倫に悩む主婦も多い。

 復讐代行を名乗る業者による詐欺といえば、05年に東京で起きた事件が有名だ。多摩市在住の女性が、不倫関係にあった男性の妻を殺害すべく“殺人請け負いサイト”で依頼したところ、サイトで知り合った男から「調査費用」や「薬品購入代」などの名目で、約10回にわたって1500万円を払わされたものだ。

 不審に思った女性が警察に相談したために事件が明るみに出たが、この事件では、詐欺被害を受けた側の女性も、暴力行為等処罰法違反の容疑で逮捕されている。

「こうした業者による詐欺には、『復讐を実行しない』というケースのほかに、『復讐を依頼したことをターゲットに伝える』と依頼者を脅すなど、最初から恐喝目的の業者が多い。

 最近は、少し変わった手口でだまそうとする業者も現れており、11年には千葉県で『復讐代行業者』を名乗る者が、不特定多数の人間にある手紙を送りつける事案が発生している。

 手紙は『あなたに対して、あるお客様から復讐依頼を請け負うことになりました』という文面で始まり、『ご相談、ご質問は実行期間の2日前までお受けいたします』という内容で結ばれていたそうです」(アンダーグラウンドビジネスに詳しいジャーナリスト)

 これは「痛い目を見たくなかったら、示談にしてやるから金を払え」という恐喝と同じだ。この事案では、自治体が注意喚起したこともあり、実際に被害を受けた人こそいなかったが、一歩間違えば「示談金」や「手数料」などの名目で何度も恐喝に遭う事態に陥っていただろう。

悪質業者にだまされてしまう人の特徴とは?

 このような悪質な業者には、どのように対抗すればいいのだろうか。「一番効果的な方法は“無視”です。先の千葉の事案で被害者が出なかったのは、全員が業者を無視したからでした」(同)という。

 業者に「復讐代行」を依頼してしまった人の中には、この方法に躊躇する人もいるかもしれない。「報復が怖い」「暴露されたらどうしよう」「通報されたら」などと、尻込みしてしまうからである。

 しかし、冷静に考えれば、「業者は、依頼者に危害を加えることはできない」ということがわかるはずだ。

「復讐代行業者のほとんどは、『リスクを冒すこと』を極度に恐れています。報復や通報はもちろん、『復讐相手にバラされたくなかったら、金を払え』という脅し文句も、すべて犯罪行為に当たります。

 それらが明るみに出れば、業者自身が逮捕される危険が高まります。また、彼らは詐欺をビジネスとしてやっているので、リスクを冒すよりも、別のカモを探したほうが効率がいいこともわかっています。こちらが無視に徹すれば、業者側はなす術がないのです」(同)

「人を呪わば穴二つ」という言葉がある。法治国家では、相手を不法に貶める行為を働けば、必ず手痛い結果となって自身に返ってくる。人間関係などで深い悩みを抱えているとしても、怪しい業者に相談するなどはもってのほかだ。まずは家族や友人、あるいは冒頭に挙げた「働く人の悩みホットライン」などに相談してみてはいかがだろうか。
(文=杉村甚八)

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