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前川修満「会計士に隠しごとはできない」

ワタミ、「全従業員に対する過重労働再発防止策」制定でブラック企業&経営危機脱出へ

文=前川修満/公認会計士・税理士、アスト税理士法人代表
ワタミ、「全従業員に対する過重労働再発防止策」制定でブラック企業&経営危機脱出への画像1ワタミ店舗(撮影=編集部)

 ブラック企業とのレッテルを貼られてしまったワタミは昨年、大きな経営危機に直面しました。そのワタミの2015年度の業績は、売上高が1282億円、営業利益が2億9000万円の赤字、経常利益が11億3200万円の赤字でした。ただし、介護事業を売却し151億円の特別利益を計上したので、最終利益に当たる当期純利益は78億5300万円の黒字となりました。

注目すべきワタミの再建の成否

 
 ワタミの再建の成否は、注目すべき事柄です。
 
 15年12月、ワタミの過労自死事件の損害賠償請求訴訟が、和解により終結しました。その内容は、賠償金の支払いに加えて、過重労働の再発防止策の策定が約束されるというものでした。この点が重要です。原告である故・森美菜さんの両親は、たんに賠償金の支払いを要求したのではなく、自分たちの娘のような犠牲者が二度と生じないよう、ワタミに対して「全従業員に対する過重労働再発防止策を制定」することを要求し、これをワタミが受け入れました。

 つまり、たんなる賠償金の授受にとどまらず、原告は被告であるワタミに対して、従業員に過重労働を課すというブラック企業であることをやめるよう求め、ワタミがこれを約束したのです。ということは、この先のワタミは、旧来の考え方を大きく改めたうえで、いわゆる「ホワイト路線」に大きく舵を切ったということを意味します。

 この「ホワイト化」に取り組むワタミの企業努力が成功するか否かは、外食産業全体に及ぼす影響が大きく、注目されるところです。

飲食店経営は楽ではない

 そもそも外食産業というのは、ブラック化しやすい産業です。なぜなら飲食店の経営は、いわゆるサラリーマンではなく、個人事業主の人並み外れた経営努力が必要とされる業界だからです。

 たとえば、埼玉県志木市の「麺家うえだ」店主・上田美小枝さんは、お店の営業時間は11時半から16時までの4時間半ですが、営業終了後は毎日必ず店内をくまなく掃除し、その後、仕込みに入ります。営業時間の短さは仕込みに圧倒的に時間が掛かるためであり、仕込みが終わるのは翌日の明け方です。その上田さんは定休日の月曜日以外は店に寝泊まりをしているそうです。平均睡眠時間は3時間で、家に帰るのはシャワーを浴びるためだけの1時間半のみだそうです。

前川修満/公認会計士・税理士、アスト税理士法人代表

前川修満/公認会計士・税理士、アスト税理士法人代表

1960年石川県金沢市生まれ。同志社大学商学部卒業。公認会計士・税理士・日本証券アナリスト協会検定会員。澁谷工業株式会社、KPMG港監査法人(現・あずさ監査法人)を経て、1992年に公認会計士・前川修満事務所を開業。2006年にはアスト税理士法人を設立し、代表社員に就任。これまで、数多くの経営者や会社員に、セミナーや書籍を通じて決算書の読み方を解説してきた。決算書を通して企業の「裏の顔」を見つけ出す方法とその面白さを知ってもらいたい、との思いから2015年に『会計士は見た!』(文藝春秋)を執筆。『やっぱり会計士は見た!―本当に優良な会社を見抜く方法』は、決算書から「裏の顔」を見出す手法をいかし、優良な会社をいかに見抜くか、さらにそこから日本企業が今後何をすべきか、という視点で著した。

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