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前川修満「会計士に隠しごとはできない」

ワタミ、「全従業員に対する過重労働再発防止策」制定でブラック企業&経営危機脱出へ

文=前川修満/公認会計士・税理士、アスト税理士法人代表

 この「うえだ」はたいそうな人気店で繁盛していますが、これは上田さんが上司から命令されて仕事を行っているのではなく、事業主である上田さんの情熱と根性で成り立っているビジネスです。もし企業が自社の従業員に対して上田さんのように働くことを要求したら、それは明らかに過重労働であって、その企業はブラック企業です。

 しかしながら、個人が営む飲食店のなかには、上田さんのように明白に過重労働に該当するような仕事ぶりの人が少なくありません。彼らは自分の意思で、体を張って飲食店経営をしています。外食産業の企業は、そのような強力な競争相手と戦っています。これが、飲食店経営の現実です。

 しかし、だからといって従業員に過重な労働を課して、使い捨てにするような雇用は許されません。この重大な課題に取り組む象徴的な企業が現在のワタミです。そのため、新しいスタートラインに立ったワタミの経営の成否は、大いに注目されるのです。

ワタミのセグメント情報から見えること

 ワタミの事業は、「国内外食」「宅食」「介護」「海外外食」「環境」「農業」の6種類の事業からなります(「介護」は15年12月に売却)。その事業ごとの業績は、以下のとおりでした。

ワタミ、「全従業員に対する過重労働再発防止策」制定でブラック企業&経営危機脱出への画像2(出典:15年3月期 決算短信より)

 このなかで、質量ともにもっとも大きな比重を占めているのは「国外外食」であり、ワタミはその国内外食で15億3500万円もの赤字を産んでしまいました。当然のことながら、これを黒字化しないことにはワタミの再生はあり得ません。

過去数年間における国内外食の業績の推移

 
 以下に掲げる表とグラフは、過去6年間におけるワタミの国内外食の四半期別利益データです。

ワタミ、「全従業員に対する過重労働再発防止策」制定でブラック企業&経営危機脱出への画像3(過年度の有価証券報告書および直近の決算短信にもとづき筆者が計算・作成)

 このデータには、はっきりとした特徴があります。12年7~9月頃から、はっきりとした業績の低落傾向がみえます。そして、13年からは年間を通じて赤字経営を余儀なくされています。12年、ワタミは、有識者やジャーナリストなどで運営され一般の人々が投票する「ブラック企業大賞」の市民賞を受賞し、13年には大賞を受賞しています。つまり、ブラック企業としての評判とともに、会社経営が傾いてしまったことが一目瞭然です。

前川修満/公認会計士・税理士、アスト税理士法人代表

前川修満/公認会計士・税理士、アスト税理士法人代表

1960年石川県金沢市生まれ。同志社大学商学部卒業。公認会計士・税理士・日本証券アナリスト協会検定会員。澁谷工業株式会社、KPMG港監査法人(現・あずさ監査法人)を経て、1992年に公認会計士・前川修満事務所を開業。2006年にはアスト税理士法人を設立し、代表社員に就任。これまで、数多くの経営者や会社員に、セミナーや書籍を通じて決算書の読み方を解説してきた。決算書を通して企業の「裏の顔」を見つけ出す方法とその面白さを知ってもらいたい、との思いから2015年に『会計士は見た!』(文藝春秋)を執筆。『やっぱり会計士は見た!―本当に優良な会社を見抜く方法』は、決算書から「裏の顔」を見出す手法をいかし、優良な会社をいかに見抜くか、さらにそこから日本企業が今後何をすべきか、という視点で著した。

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