韓国メディアによれば、シン・ジュンホはこうした内容を語ったという。いずれも、日本で行われる記者発表では、明らかにされていない内容ばかりだった。そしてシンの語り口からは、LINEにとってのタイでの成功は、日本での成功と並んで語られていたのだった。
韓国発のサービスが、日本、台湾、タイと、次々に広がってゆく。その中核にあるのは、LINEのグローバルな姿を描いている、LINEプラスという“もう一つの本社”があることを十分に確信させるものだった。
LINEで働く社員たちは、実際にどう思っているのか。
「LINEプラスは、LINE事業の海外マーケティング業務だけを担当していることになっているが、実際は、グローバル戦略や海外進出といった場合、予算や人員を含め、全てを司るのがLINEプラスです。逆にいうと、LINE本社は日本市場に特化した組織だと捉えた方がいい」(LINE関係者)
また幸運なことに、なぜLINEプラスが大きな力を持っているのか、そのパワーの源泉を理解するための貴重な証言も得ることができた。ポイントは、韓国ネイバーという元締めとの距離だった。
「おそらく韓国側は、LINEプラスなどという会社が存在しない、もしくは全く権力を持っていない組織である、と信じてもらいたいと考えています。だが、実際は、LINEプラスの社員たちは、ほかの会社では持ち得ない特権を持っている。というのも、彼らは元締めであるネイバーの社内政治を全て知りつくしているからです。奇妙な組織です」(LINEプラス関係者)
要するに、LINEの子会社でありながら、グローバル戦略においては、LINE自体を凌駕する力を持つ組織。それこそがLINEプラスなのだ。
7月には、日本経済の表舞台にあがることになるLINE。しかし、その本当の本社がどこにあるのか、会社資料をみるだけでは分からない複雑な経営実態を、この会社は抱えている。
もしあなたがLINEの株主になりたいと思うのであれば、ぜひ、一度このように質問することをおすすめしたい。
「LINEの本社は、日本と韓国のどちらにあるのでしょうか?」
NewsPicks取材班は、なかなか日本では存在が知られて来なかったLINEを支える韓国流の経営スタイルを、ノンフィクション「韓流経営LINE」(扶桑社新書)にまとめ、7月2日に発売した。
日本を見渡しても、なかなか世界展開で成功するIT企業が登場して来ない中で、早くから世界を目指し、日本市場の攻略のために徹底した戦略を取ってきたLINEと親会社であるネイバー、そして日本での成功に欠かせなかったライブドアにフォーカスを当てた、これまでにない書籍となっている。
(文=NewsPicks取材班)