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【ゼロから徹底解説:混沌化する欧州】各国一斉に極右化、自国第一主義で他国排斥

文=真壁昭夫/信州大学経法学部教授
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 このように考えると、EUとの条件闘争などを念頭に置いてきた欧州懐疑主義論者の主張は、結果的に自国およびEUの将来に無視できないリスクをもたらしている。これまでの世界経済では、多国間の経済連携を軸とした投資・貿易の促進によって成長が支えられてきた。問題はリーンマンショック後の景気低迷のなかで、欧州各国が財政の再建を重視しすぎたことだ。その結果、南欧を中心に雇用環境は不安定であり、賃金は伸びづらい。民衆の不満は解消されず、テロの発生が既存の政治家への不信、反感につながっている。

 このように考えると、経済成長を実感できないことが、ポピュリズム政治が広がる主な原因だろう。この問題が解決されない以上、EUから離れたほうがベターだという考えは減りづらい。こうした世論を抑えるには、究極的にユーロ圏を中心にEU加盟各国がユナイテッド・ステーツ・オブ・ヨーロッパというべき姿を目指さなければならない。

歯止めかからぬ右傾化

 EUの政治・経済の安定には、各国が連携し構造改革を進めることが必要だ。それによって成長基盤を強化しない限り、ポピュリズム政治の台頭、政治の右傾化に歯止めをかけることは難しいだろう。構造改革にはかなりの時間も必要だ。そのなかで、保守、中道、左派、いずれの政党も支持を獲得しなければならない。

 この流れのなかでオランダの下院選挙の結果を考えるべきだ。ウィルダース党首率いる自由党が伸び悩んだからといって、あまり楽観できない。まず、ルッテ首相の主張は、徐々に右傾化する世論に迎合してきた。同国での移民排斥を求める風潮を受け、ルッテ首相は“嫌なら出ていけ”と移民にオランダへの順応を求めた。また選挙直前には、エルドアン大統領が権限強化を目指していることを懸念し、トルコの政治家の入国を拒否した。

 もともと、ルッテ首相はリベラルな政策を重視してきた。ここまで移民やトルコに対して強硬な姿勢をとったのは、今回の選挙が初めてとみられる。それほどまでに、大衆の不満を取り込む極右政党への支持は根強い。極右政党に対抗するには、既存の政治家の右傾化は避けられなくなっている。右傾化が避けられたとしても、世論の不満を解消するためには、これまで以上に社会給付の増大など不満を解消する政策が必要になるだろう。

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