地域金融機関の取引先のなかには、国内市場の縮小を受け、海外に活路を見いだそうと中国・新興国に進出する企業が増加している。これら取引先は地域の中核企業であるケースが少なくなく、地域金融機関がメインバンクとなっている。その一方で、急速なメイン取引先の海外進出に十分に対応できずに、与信管理が後手に回っている地域金融機関もあるのではないかとみられている。その実態把握に乗り出したわけだ。

 金融庁は中国・新興国向け与信について、カントリーリミットを設定した上で、現地法人、親会社の状況等を定期的にモニタリングして経営陣に報告している銀行がある半面、リスクは限定的であるとして新興国の経済減速の影響を踏まえたストレステストを行っていない銀行もあるのではないかという問題意識を持っている。

 調査の結果、中国・新興国に拠点を有する大口メイン先であるにもかかわらず、メイン先の中国・新興国関連の売上高や、メイン先の現地法人等の債権(保証や売掛債権等)を把握していないケースが見られたほか、そもそも大口メイン先が新興国にどのような拠点を設置しているのか、その有無すら把握していないケースもあった。

 このため、大口与信先のうち、中国・新興国に拠点を有する債務者への与信額が大きい、もしくは中国・新興国向け与信比率の高いいくつかの地域金融機関を対象に、さらに突っ込んだ個別のヒアリングを実施した。

 その結果、「メイン先かつ大口与信先であっても、海外子会社の決算書等の詳細な情報を入手しておらず、グループ全体の財務分析に改善の余地がある」「中国・新興国の著しい経済減速を想定していない、または与信先に中国・新興国への売上依存度が高い先は少ないという認識から分析を行っていない」などの課題が浮き彫りになった。

 メガバンクは為替の変動に収益が左右されるリスク、地域金融機関は中国・新興国向け融資の不良債権化リスクという厄介な難題を抱えつつある。
(文=森岡英樹/ジャーナリスト)

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