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キヤノン、セブン&アイの子会社が株価暴騰している「理由」

文=編集部
キヤノン、セブン&アイの子会社が株価暴騰している「理由」の画像1キヤノン本社(「Wikipedia」より)

 株式市場は、なんでも売買の材料にする。親子上場している子会社の株価が上昇しているのは、再編期待銘柄として買われているからだ。

 こうした背景には、2015年6月に東京証券取引所において企業統治の指針であるコーポレートガバナンス・コードが導入されたことがある。同コードは内輪の論理ではなく、少数株主や外国人株主への配慮を求めている。

 親子上場の具体例は、ソフトバンクグループとヤフー、日立グループ、NTTとNTTドコモ、キヤノンとキヤノンマーケティングジャパン(MJ)、日本郵政とゆうちょ銀行・かんぽ生命保険などだ。有名企業の親子上場は少なくない。

 親子上場は2000年代半ばまで、ほぼ右肩上がりで増加した。資金調達を目的に子会社を上場させることが相次いだためだ。

 子会社にとって親会社は究極の安定株主といえる。しかし、こうした子会社では少数株主が保護されず、株主平等の原則に反すると批判されてきた。海外投資家の間で、このような批判が高まったことから、親子上場は2000年代後半から一転して減少に転じた。野村證券がまとめた16年度末の親子上場社数は270社で、前年に比べ11社減った。減少は10年連続で、ピークの06年度末に比べると30%少ない。

 ガバナンスのゆがみを正すよう求める投資家の声を受け、TOB(株式公開買い付け)によって子会社を上場廃止するケースが増加した。16年度は完全子会社化による上場廃止などで30社が親子上場を解消している。トヨタ自動車も、ダイハツ工業を完全子会社にした。

 親会社が子会社を完全子会社にするためのTOBを、投資家は値上がり益を享受できる絶好のチャンスと捉えている。

パナソニックはパナホームを完全子会社に

 最近、市場で話題になったのは、パナソニックによる上場子会社の住宅メーカー、パナホームの完全子会社化だ。パナソニックは当初、自社株式との株式交換方式による完全子会社化を目指していた。これに、株主で香港に拠点を置くヘッジファンド、オアシス・マネジメントが「株式交換比率が親会社以外の少数株主に不利」と異議を申し立てたため、パナソニックはTOBに切り替えた。

 TOBでは、たとえば直近1カ月間といった期間の平均株価にプレミアム(上乗せ)をつけるのが一般的だ。パナホームのTOB価格は1株1200円で、値上がり期待からパナホーム株が買われた。TOBの発表前日、4月20日の終値1031円が、4月28日には1251円の高値をつけた。株価は1週間そこそこで21.3%も上昇した。

 パナソニックは6月14日にTOBを完了し、パナホーム株の保有比率を80%に引き上げた。パナホームが9月下旬までに開く臨時株主総会で完全子会社になることが承認される。

再編期待の代表銘柄はキヤノンMJ

 再編期待の代表的な銘柄は、キヤノンMJだ。複合機、カメラ、インクジェットプリンターなどキヤノン製品の国内販売と医療用IT(情報技術)サービスが営業の二本柱だ。

 親会社のキヤノンは16年12月、東芝メディカルシステムズを6655億円で買収した。キヤノンはグループの主な医療事業を東芝メディカルに集約する。医療はキヤノンが掲げる成長の戦略のひとつで、20年度に5000億円の売り上げを目指している。

 東芝メディカルを核とする医療事業に、キヤノンが手掛けている眼底検査装置や、キヤノンMJの医療用ITサービスを統合することを検討している。社名は、薬事法などの変更手続きが完了する18年初めにキヤノンメディカルシステムズにする予定だ。

 キヤノングループの抜本的な組織再編の過程で、キヤノンMJを完全子会社にするのではないかとの期待から株価は堅調だ。

【再編期待銘柄】
※子会社(親会社・出資比率)、株価(7月21日終値)、騰落率(16年12月末比)

キヤノンMJ(キヤノン・50.1%)、2623.0円、31.4%
セブン銀行(セブン&アイ・ホールディングス ※後述)、421.0円、25.7%
SCSK(住友商事・48.7%)、5070.0円、24.0%
協和発酵キリン(キリンホールディングス・50.1%)、1933.0円、19.6%
田辺三菱製薬(三菱ケミカルホールディングス・56.3%)、2681.0円、16.9%
日立化成(日立製作所・51.2%)、3395.0円、16.1%
日経平均株価、2万99.75円、5.2%

 SCSKはITサービス大手。2011年10月に住商情報システム(SCS)がCSKを吸収した。子会社にクオカードがある。

 セブン銀行はセブン-イレブン・ジャパンが38.09%、イトーヨーカ堂が3.94%、ヨークベニマルが3.77%出資。

 日立グループには日立化成のほかにも、日立金属(日立製作所の出資比率52.7%)、日立ハイテクノロジー(同51.6%出資)など、株式の売却や他社との資本・業務提携の話が手付かずのままの銘柄もある。今後、思惑を呼ぶかもしれない。
(文=編集部)

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