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『きみが心に棲みついた』全10話終了して結局「吉岡里帆の下着姿」しか見どころなし

文=吉川織部/ドラマウォッチャー
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 吉岡里帆が初の主演を務める連続テレビドラマ『きみが心に棲みついた』(TBS系)の最終回が20日に放送された。吉岡演じる小川今日子と向井理演じる星名漣の共依存関係をテーマに、そこに割って入る吉崎幸次郎(桐谷健太)との間で繰り広げられる人間模様を描いてきたこのドラマ。切り口は良かったし、イケメンがスーツ姿でサディスティックに振る舞うというある種のツボを突いた向井の演技も話題を呼んだ。だが、最終回については残念ながら最悪だったと評するしかない。

 いかに最悪だったかを論じる前に、何が描かれるべきだったかを述べておきたい。今日子と星名は大学時代から共依存関係に陥り、星名は今日子を精神的に支配することで自分の手元から離れていかないようにしていた。一方、今日子は星名だけが自分を受け入れてくれると思い込み、星名のためなら何でもするようになっていた。だが、そんな2人の前に吉崎が現れたことで、今日子は徐々に目を覚ましていく――というのが本作の流れであった。

 公式サイトでは「三角関係ラブストーリー」と銘打たれていたし、ドラマの展開も今日子が星名と吉崎の間をフラフラ行ったり来たりする内容ではあったが、このドラマの本質は「今日子が誰とくっつくか」ではなく、「今日子と星名はそれぞれ自立できるのか」であったはずだ。当然、最終回もそこに焦点が当てられるべきだったと言える。

 実際の最終回はこうだ。星名が今日子を道連れに自殺を企てて未遂に終わり、その後病院から失踪。一年後、今日子と吉崎は街角で偶然再会する。すると、いきなり今日子と吉崎の披露宴に場面は切り替わる。同僚や友人たちが2人を祝福する中、メッセージ付きの花束が会場に届く。司会者が読み上げたメッセージカードには「キョドコのくせに」と書かれていた。思わず「星名さん?」と立ち上がる今日子。花束を届けた星名は少しだけニヤリと笑い、雑踏に姿を消した――というものだった。

 第9話で吉崎は「依存する相手が(星名から)オレに変わるだけなんじゃないか」と今日子を突き放したが、特に何の回収もされずに吉崎と今日子が結ばれるという安易なエンド。吉崎の台詞が何の伏線にもなっていない。これなら、今日子が誰も選ばずに一人で生きていくエンドのほうがよっぽどテーマに沿っていたしスッキリしたと言える。

 あるいは、一度別れた今日子と吉崎がバッタリ再会する場面で終わり、後は想像にお任せ……というエンドでも良かった。せっかく単なる恋愛ドラマではなく社会性を含んだテーマを描いてきたのに、結局安直な恋愛ドラマに落とし込むことしかできなかった脚本にはガッカリだ。

 登場人物の行動もおかしいものばかり。特に、星名の母が入院したと聞いて、面識もないのにいきなり見舞いに行く今日子はあまりにもおかしい。何を思い、何をしたくて訪ねたのか全然わからなかった。職場の代表として来た、と言っていたが、そんなことあるだろうか。そもそもこの時点で星名は親会社に戻っており、同じ会社の人間でもあるまい。

 父を殺したのは自分だ、と突然自白した星名も意味不明だ。これまでは実母が殺害したかのように描かれていたが、ここでそれをひっくり返したところでストーリー上の意味はほとんどない。むしろ、星名があれほど母親を憎み続けている理由が薄れてしまった。母のことを好きだった星名がどこで変わってしまったのかも回収されずじまいだ。

 成川映美(中村アン)はスズキ次郎(ムロツヨシ)を呼び出し、「勘違いさせちゃってごめんね、てへっ」みたいなことを言って去る。スズキは勝手に勘違いしていたかもしれないが、映美は別にこれまで普通に接していたはず。最初から最後まで、ストーリーの中に無理にしゃしゃり出てくるようなキャラクターだった。

 今日子と吉崎の披露宴に、勝手に今日子をライバル視していた飯田彩香(石橋杏奈)と為末れいか(田中真琴)がしれっとした顔で出席しているのもあり得ない。飯田は今日子を罵倒してバッグで殴りつけていたし、為末は陰険なやり方で今日子を陥れようとしていたはずだ。最終回だからといって、これまでの展開をきれいさっぱり忘れたかのように無理に丸く収める必要もないだろう。話を広げ、ストーリーにかかわる人物をどんどん増やしてみたものの、手に負えずグダグダのまま終わってしまったという印象だ。

 主演の吉岡も、下着姿になった以外はほとんど話題にならなかった。脇では光るタイプだと思うので、もう少し地道に経験を積んでほしい。
(文=吉川織部/ドラマウォッチャー)

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