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『西郷どん』渡辺謙が急にブチ切れる意味不明な脚本…迫力シーンが台無しに

文=吉川織部/ドラマウォッチャー
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 鈴木亮平が主演を務めるNHK大河ドラマ『西郷どん』の第11回が18日に放送され、平均視聴率は前回より0.2ポイント増の14.6%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)だったことがわかった。初回からここまで14~15%台を行き来しており、視聴率に大きな変動は見られない。

 今回のサブタイトルは、「斉彬暗殺」。異国の脅威に対抗するための方策を精力的に推し進める開明的な藩主・島津斉彬(渡辺謙)に毒が盛られていたという衝撃の展開となった。実際には一命を取り留めたため、「暗殺未遂」もしくは「暗殺計画進行中」といったほうが正確ではあるが、いずれにせよ斉彬がほどなくして没することは明白だ。

 斉彬は比較的若くして急死しており、それ以前に嫡子も次々と死んでいることから、当時もさまざまな疑いが浮上したらしい。実際には単なる偶然だったかもしれないが、ドラマとしてこれを生かさない手はないだろう。仮説を大胆に取り入れ、斉彬自身も嫡子も長い間ヒ素を盛られていたと断定した筋立てはなかなか良い。

 また、もっとも怪しかった斉彬の父・斉興(鹿賀丈史)とその妻・由羅(小柳ルミ子)が無実であり、次期将軍をめぐって斉彬と対立する井伊直弼(佐野史郎)が黒幕であるかのような展開になったのもおもしろい。善玉である斉彬と対比させるためだろうが、佐野演じる井伊直弼はいかにも陰険そうであり、何をたくらんでいるのかわからないいやらしさがある。

 江戸城の廊下ですれ違った斉彬に「くれぐれも御身大切になされませ」と表情ひとつ変えずに話した場面は、ヤクザが「夜道に気を付けろよ」と暗に脅しているかのようで笑ってしまった。少々テンプレ的な配役ではあるが、キャスティングとして成功しているといえよう。本作ではこれまでほとんど政治劇が描かれていないが、情熱的な斉彬と冷徹な直弼の対決は、地盤を盛り上げる格好の題材になるはずだ。どのように描かれるのか期待したい。

 今回はこのほか、渡辺謙が鈴木亮平を蹴り飛ばすシーンも印象的だった。食事に毒を持った犯人を捜そうとして斉興の屋敷に押し掛けた吉之助が、斉彬の怒りに触れて蹴飛ばされた場面だ。

 映像的には迫力があっておもしろかったが、斉彬の行動として考えると少しおかしい。「殿のお命を狙う者を一刻でも早く見つけ出そうと思った」と弁明する吉之助に、斉彬は「そんなくだらぬことのためにお前を召し上げたのではない」と言い放つ。

 そして、鬼のような表情を浮かべて「命に代えてもやらねばならぬことがあるのだ!」と吉之助を叱りつけたかと思えば、何かに取りつかれたかのように虚空を見つめ、「この国を変える。この国を強うする」とつぶやく。

 言いたいことはわかるが、大義を果たす前に暗殺されてしまっては元も子もない。命に代えてもやらなければならないことがあるからこそ、無駄死にせずに命を長らえるべきだろう。熱量たっぷりな渡辺の演技のおかげで一見すると感動的な場面のように見えるが、よくよく考えると理屈に合っていない。

 吉之助も殿の命が大切だからこそ犯人捜しに奔走したのに、「大バカ者」と怒鳴られるわ蹴飛ばされるわでさんざんである。これまでは人間味のある君主だったのに、急に“信長化”してしまったようだ。熱い男であるのを表現するために、“何がきっかけでキレるかわからない人物”にする必要はないだろう。人物設定をもう少し考えてほしい。
(文=吉川織部/ドラマウォッチャー)

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