6番目に質問に立った株主は、昨年の大相撲の横綱による暴行事件や日大アメフト部の危険タックル問題など、ワイドショーで連日同じ内容の番組が放送されていることに「一億総白痴化。視聴者をバカにするな」と声を荒らげた。また、現在開催中の「2018 FIFAワールドカップ(W杯) ロシア大会」をめぐっては、フジテレビのコメンテーターに専門家ではない小柳ルミ子が起用されていることも疑問だとした。
フジテレビは誤報が多いとの批判も毎年、株主総会では多い。情報番組『とくダネ!』では昨年7月、容疑者の映像を取り違えて放映、8月には京都府議の男性が書類送検されたとの誤報を流した。これに対してBPO(放送倫理・番組向上機構)から放送倫理違反と指摘されている。産経新聞は昨年12月、沖縄県内の交通事故で「米兵が日本人を救出した」と誤報し、今年2月に記事削除に追い込まれた。
民放キー局の視聴率競争で、数年前からフジテレビは4番手に低迷し、背後にはテレビ東京しかいない苦境が続く。こうした状況もあって、8番目に質問に立った株主は「不動産屋が放送事業をやっているようなものだ」と経営姿勢を批判した。実際、グループ内のセグメント利益で放送事業の利益が73億9300万円に対して、都市開発事業の利益は倍近くの141億7100万円もある。
会社側は「中期経営計画で都市開発事業は重要」とし、遠藤龍之介専務取締役は「お台場へのカジノ誘致に力を入れていきたい」と発言した。
今年はヤラセなし?
フジHDの株主総会をめぐっては、2014年と2015年の総会に関して、株主2人が“ヤラセ総会”だとして決議取消を求める訴えを起こした。東京地裁は「14年総会で質問した株主16人のうち、8人がフジテレビの幹部社員株主」であると認めたものの、原告の請求は棄却した。15年総会についても請求を棄却したものの「質問した株主17人のうち5人がフジテレビの社員株主」と認めた。原告は東京高裁に控訴したものの、いずれも控訴棄却。原告2人は最高裁に上告中だ。
こうした経緯もあり、今年の総会で“ヤラセ質問”が飛び出すかどうか注目されたが、経営陣にエールを送る質問は13番目に質問した株主のみ。フジテレビが出資している『万引き家族』がカンヌ国際映画祭で最高賞のパルムドールに輝いたものの、総会ではお祝いムードが全然ないという意見だった。
この13人目が最後の質問者となり、開始2時間半が過ぎたところで質疑打ち切りとなった。
(文=編集部)