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篠崎靖男「世界を渡り歩いた指揮者の目」

9・11米国同時多発テロから17年、今明かす、私がテロ直後の米国で見た真実

文=篠崎靖男/指揮者
9・11米国同時多発テロから17年、今明かす、私がテロ直後の米国で見た真実の画像1テロ以前のニューヨーク(「Getty Images」より)

 今から17年前の2001年9月11日、朝起きてパソコンを開けると、たくさんのメールが入ってきました。その前の週に引っ越して来たばかりのロサンゼルスでのことです。日本の友人たちからの「ニューヨークで大きなテロがあったそうだけど、大丈夫?」というメッセージを理解できずに読み始めていると、隣の部屋から妻の大きな叫び声が聞こえて来ました。急いで隣の部屋に行き、テレビを見た時のことは忘れられません。

 航空機がニューヨークの貿易センタービルや、アメリカ国防総省に飛び込んでいく映像。当時、世界第2位の高さを誇った、あのツインタワーの2つとも炎上しています。その時は、ハイジャックされた航空機がテロに使われて、乗客を入れたまま突入したことなど、何もわかりませんでした。

 当時の僕は、その後3年間務めることになるロサンゼルス・フィルの副指揮者に就任したばかりで、オーケストラは夏の野外コンサートシーズンの最終週を迎えていました。副指揮者の仕事は、リハーサルに立ち会って、音のバランスを聴いたりすることも含まれていたので、テレビをゆっくり見ている時間もなく、とにかく会場に向かいます。不安を感じるのはその後の出来事でした。

 来たばかりのアメリカで起こったことに、何がなんだかわからない状況です。会場の楽屋では、楽員もスタッフも、みんなテレビにくぎ付けになっています。実際にテロが起こった東海岸と、ロサンゼルスには3時間の時差があるので、ビル倒壊も含めて、すべてが終わっていたけれど、画面には飛行機が突っ込む様子や、ビルが崩壊する様子が映し出されているだけで、イスラム過激派が行ったということが判明したのは、それからずっと後でした。

 誰もリハーサルどころではなく、「アメリカ国防総省も飛行機が突っ込んだらしい」「ペンシルバニア州にも落ちたらしい」と、どんどん新しいニュースが入ってきます。「次はどこなのだろう」と、みんな恐怖で震えています。それでも、その日の夜にはコンサートが予定されていたので、とにかく始めなくてはなりませんでした。しかし、当時の音楽監督サロネンが休憩を取った時に、オーケストラ最高責任者のボーダ氏がステージにやってきて、「今晩の夜のコンサートはキャンセル。全米すべての公共設備の使用を禁じられた」と、楽員にアナウンスがあり、みんな急いで家に帰って行きました。

篠﨑靖男/指揮者、桐朋学園大学音楽学部非常勤講師

篠﨑靖男/指揮者、桐朋学園大学音楽学部非常勤講師

 桐朋学園大学卒業。1993年ペドロッティ国際指揮者コンクール最高位。ウィーン国立音楽大学で研鑽を積み、2000年シベリウス国際指揮者コンクールで第2位を受賞し、ヘルシンキ・フィルを指揮してヨーロッパにデビュー。 2001年より2004年までロサンゼルス・フィルの副指揮者を務めた後ロンドンに本拠を移し、ロンドン・フィル、BBCフィル、フランクフルト放送響、ボーンマス響、フィンランド放送響、スウェーデン放送響、ドイツ・マグデブルク・フィル、南アフリカ共和国のKZNフィル、ヨハネスブルグ・フィル、ケープタウン・フィルなど、日本国内はもとより各国の主要オーケストラを指揮。2007年から2014年7月に勇退するまで7年半、フィンランド・キュミ・シンフォニエッタの芸術監督・首席指揮者としてオーケストラの目覚しい発展を支え、2014年9月から2018年3月まで静岡響のミュージック・アドバイザーと常任指揮者を務めるなど、国内外で活躍を続けている。現在、桐朋学園大学音楽学部非常勤講師(指揮専攻)として後進の指導に当たっている。エガミ・アートオフィス所属

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