ビジネスジャーナル > 企業ニュース > セブン&アイ、そごう・西武を放出か
NEW

セブン&アイ、セブンイレブン以外が撃沈…そごう・西武を放出で「切り売り」との観測広まる

文=編集部
セブン&アイ、セブンイレブン以外が撃沈…そごう・西武を放出で「切り売り」との観測広まるの画像1セブン&アイHD・井阪隆一社長(ロイター/アフロ)

 経済誌のスクープ合戦が続いている。

 10月10日、「ダイヤモンド・オンライン」が『「そごう・西武の売却説」が急浮上、百貨店は“オワコン”なのか』、「日経ビジネスオンライン」が『ファミマ、ユニー全株をドンキに売却検討』と報じた。同じ日に、2つの再編話が流れたことになる。ドンキホーテホールディングスによるユニーの買収については、即座に正式発表されたから、会社側からのリークがあったとみる向きが多い。次はそごう・西武の身売りが現実となる番だろうか。

 三越伊勢丹ホールディングス(HD)は9月26日、伊勢丹相模原店、伊勢丹府中店、新潟三越の3店舗を閉鎖すると発表した。この店舗閉鎖の発表と同時に浮上してきたのが、セブン&アイ・ホールディングス(HD)傘下の百貨店、そごう・西武の売却説だ。

 そごう・西武は、鈴木敏文名誉顧問(前セブン&アイHD会長)が残した“負の遺産”との見方がある。鈴木氏は百貨店という業態に固執した。

「野球選手が一度はジャイアンツのユニフォームを着たがるように、流通人として百貨店というステータスが欲しかったのではないか」(大手百貨店の首脳)

 スーパーマーケットを立ち上げ、日本に流通革命を起こした第一世代の経営者は、百貨店を経営したいとの思いがことのほか強い。彼らが若いころは、百貨店が流通業界の華だったからだ。

 鈴木氏がセブン&アイHDを去って2年半余。井阪隆一社長が構造改革の成果を出すためには、鈴木氏の“遺産”でもっとも大きい百貨店事業の処分に手をつける必要がある。そごう・西武は、長期低迷が続いているからだ。

売却先候補は?

 セブン&アイHDの連結子会社であるそごう・西武の2018年3~8月中間期決算の売上高は2920億円。前年同期に比べて464億円、13.7%減と2ケタの落ち込みである。営業損益は2億9200万円の赤字(前年同期は6億2600万円の黒字)に転落した。

 そごう横浜店など首都圏の大型店は改装に取り組んだが、地方店の譲渡や閉店に伴う損失が重荷となり、営業赤字を計上する破目に陥った。既存店の売り上げは1.0%減だった。

【主要店舗売上高】(18年3~8月期)
西武池袋本店…886億円(前年同期比-2.2%)
そごう横浜店…530億円(同0.6%)
・そごう千葉店…363億円(同2.1%)
・西武渋谷店…213億円(同3.3%)
・そごう広島店…189億円(-3.4%)
・そごう大宮店…159億円(-0.6%)
(資料:セブン&アイHD 18年3~8月期決算の補足資料)

 19年2月期通期の百貨店の売上高は6306億円の見込み。18年2月期に比べて437億円、6.5%の減収を予想している。落ち込みに歯止めがかからない状態だ。

 井阪社長にとっては、“鈴木案件”である百貨店に未練はないはずだ。とはいっても、丸ごとの売却先探しは至難の業だ。今年7月、米ウォルマート傘下の大手スーパー西友の売却話が駆け巡ったが、いまだに売却先は決まっていない。

 国内の競合を見渡すと、三越伊勢丹HDは伊勢丹新宿本店、三越日本橋本店、三越銀座店の都心3店に経営資源を集中させる方針だ。また、J.フロントリテイリングは新商業施設「ギンザ・シックス」を開業したばかり。高島屋は旗艦店である東京・日本橋店を都市型ショッピングセンターに業態を転換した。このなかでは高島屋が“受け皿”候補に取り沙汰されているが、三越伊勢丹、J.フロント、高島屋のいずれも、不採算店が多いそごう・西武を丸ごと買収することに魅力は感じないだろう。

 結局、ファンドに売却して店舗ごとに切り売りするしかないとの見方が強い。米アマゾンや楽天といったインターネット通販は、実店舗とネットを融合するマルチチャネルに力を入れている。何かと話題の衣料通販「ZOZOTOWN」を運営するZOZOが、もし実店舗に興味を示せば、ホームグランドであるそごう千葉店の買収に手を挙げることがあるかもしれない。また、首都圏に店舗が欲しい家具のニトリホールディングスの名前は常に挙がる。

 セブン&アイHDのもうひとつのお荷物は、総合スーパーのイトーヨーカ堂だ。18年3~8月期の売上高は5991億円。前年同期に比べて0.3%減だ。利幅の大きい衣料品が6.5%減と相変わらず不振が続く。人件費や宣伝費など経費節減の効果で営業利益は18億円の黒字(前年同期は19億円の赤字)に転換した。海外の“物言う株主”からイトーヨーカ堂の売却を求められたことは記憶に新しいが、イトーヨーカ堂は創業者の伊藤雅俊氏が立ち上げた事業だ。売却することは、まずないとみられている。

海外コンビニ事業が好調

 セブン&アイHDの業績は好調だ。18年3~8月の連結決算は、グループ全体の売上高が前年同期比12%増の3兆3435億円。営業利益は3%増の1996億円。同期間では過去最高となった。海外のコンビニエンスストア事業の売り上げが大きく伸びた。

 海外コンビニの営業総収入(決算は1~6月)は1兆3579億円。前年同期より42%増である。1月に米国で同業他社の1030店を新たに取り込んだことが寄与した。営業利益は同15%増の451億円。

 国内のコンビニ事業の営業総収入は4461億円で3%増。営業利益は1274億円で2.5%の減益となった。人手不足に悩む加盟店を支援するために経営指導料を減らした影響が出た。

 国内の減益を海外で補い、コンビニ事業の営業利益は1725億円に上る。グループ全体の86%の利益を叩き出している。実態は相変わらずコンビニの“一本足打法”だ。

 逆にいえば、いろいろな事業に手を出したが、まったく育っていないということだ。コンビニに偏りすぎるのも問題だろう。

 井阪社長は、日米のコンビニ事業をグループの成長の柱に位置付けてきた。それが評価され、10月5日に株価は年初来高値の5203円を付けた。ようやく鈴木敏文氏時代の5000円台に戻った。

創業家の次男、伊藤順朗氏に“大政奉還”か

 井阪社長が日本経済団体連合会(経団連)・副会長のポストに色気を見せているという噂が流れている。今年5月、“副会長待機ポスト”といわれる経団連の審議員会副議長に就任した。来春の副会長の人選に向け、根回しに動いていると伝えられている。

 鈴木敏文氏は1997年に経団連の副会長に就いた。経団連の副会長になれば、慣例に従い、井阪氏はセブン&アイHDの会長に退いて財界活動に軸足を移すだろう。「創業家の次男、伊藤順朗氏に“大政奉還”か」との観測が流れる所以(ゆえん)だ。

 順朗氏は鈴木体制下では閑職に回され冷や飯を食っていたが、井阪体制下で復活。今では序列第3位の取締役常務執行役員経営推進本部長である。

 国内・海外ともコンビニは好調だが、ネット、百貨店、祖業のイトーヨーカ堂など懸案が山積している。創業家の御曹司に、こうした難局を任せられるのだろうか。
(文=編集部)

BusinessJournal編集部

Business Journal

企業・業界・経済・IT・社会・政治・マネー・ヘルスライフ・キャリア・エンタメなど、さまざまな情報を独自の切り口で発信するニュースサイト

Twitter: @biz_journal

Facebook: @biz.journal.cyzo

Instagram: @businessjournal3

ニュースサイト「Business Journal」

セブン&アイ、セブンイレブン以外が撃沈…そごう・西武を放出で「切り売り」との観測広まるのページです。ビジネスジャーナルは、企業、, , , の最新ニュースをビジネスパーソン向けにいち早くお届けします。ビジネスの本音に迫るならビジネスジャーナルへ!